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病気が隠れているかも!?女性の貧血の原因と対処法について

医療法人みらいグループ
病気が隠れているかも!?女性の貧血の原因と対処法について

立ちくらみやめまいなど、日常生活にも支障をきたす症状がみられることもある貧血。日本人女性は特に貧血の割合が高いとも言われています。貧血が起こる原因にはさまざまな要因があり、中には病気のサインとしてあらわれるケースもあるでしょう。

この記事では、女性の貧血について症状や原因、受診する診療科、対処方法などを紹介します。現在、貧血に悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。

貧血とは

貧血とは
女性にとって身近な症状でもある貧血。これまで貧血になったことが一度も無いという人は案外少ないのではないでしょうか。まず、最初に貧血になると体内でどのような現象が起こるのかを解説します。

血液には体内に酸素を送り届ける働きがありますが、その主要な役割を担っているのが赤血球に含まれるヘモグロビンです。ヘモグロビンは赤血球内に存在するタンパク質の一種で、酸素分子と結合する特徴があります。これにより、肺から取り入れた酸素とヘモグロビンが結合し、赤血球として体内のさまざまな器官に送り届けられます。

貧血とは、このヘモグロビンが不足してしまうことで起こる低酸素症状を言います。

貧血の診断基準

貧血の判断基準
貧血は主に血液検査で病状の有無を検査できます。血液中に含まれる赤血球の数や密度、ヘモグロビンの量なども調べることが可能です。その結果、男性は13g/dL、女性は12g/dLを下回ると貧血と診断され治療が必要とされます。

貧血の症状

貧血になると以下の症状がみられます。

めまい、立ちくらみ、動機、息切れ、顔面蒼白、倦怠感、疲労感、頭痛、眠気、集中力の低下、耳鳴り、口角炎、口内炎、味覚異常、爪が割れやすい、爪の変形、レストレスレッグス症候群、氷食症、肌荒れなど

顔面蒼白の際、唇が紫になる人も多くいます。

近年よく聞かれるようになったレストレスレッグス症候群は、いわゆる「むずむず脚症候群」です。就寝しようと横になった際などに、脚にむずむずとした不快感を覚える症状で、脚を動かすと和らぐことが特徴です。

また、無性に氷が食べたくなる氷食症も貧血に見られる症状のひとつで異食症の一種と言われています。

女性の貧血の原因3つ

女性の貧血の原因3つ
貧血はさまざまな原因によって引き起こされることがある症状です、今回は女性の貧血について3つの大きな原因について詳しく紹介していきます。

1.鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血は、ヘモグロビンを合成するための原料となる鉄分の不足によって引き起こされる貧血を差します。鉄欠乏性貧血には、鉄の吸収阻害や摂取不足などの原因があります。

ストレスや消化器疾患が原因の吸収阻害

食べ物から摂取した鉄分を胃で充分に吸収できないと、鉄欠乏性貧血を引き起こすことがあります。特に、ストレスは胃の吸収阻害を引き起こす大きな要因のひとつです。

ストレスを感じると、自律神経が乱れ胃粘膜の機能が低下してしまいます。これにより、食事から充分な鉄を吸収できず鉄欠乏性貧血になってしまうことがあります。特に、慢性的な貧血を抱えている人の中には、ストレスが原因となっているケースも少なくありません。

鉄の摂取不足

食事から摂取する栄養が不足することにより、ヘモグロビンの合成量が減少してしまいます。ヘモグロビンを作るために必要な栄養素は、鉄、亜鉛、葉酸、ビタミンB12などです。特に、日本人は鉄や葉酸の摂取量が不足している傾向にあります。

また、妊娠時や授乳時など、普段よりも多くのヘモグロビンを必要とする時期には、必要量に応じた栄養の摂取が欠かせません。妊娠時、授乳時に普段と同じ食事をとっていると、ヘモグロビンを作り出すための栄養が足りなくなってしまうことがあります。

出血性貧血

出血や血液の排出により、血液量が減少することで必要なヘモグロビンの総量を確保できず貧血を引き起こすことがあります。

消化器をはじめとする臓器からの出血

臓器が出血を起こすことで、貧血を引き起こすことがあります。特に、胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、潰瘍からの出血に加え鉄の吸収阻害を併発することで貧血を起こしやすい傾向にあります。

月経異常

通常よりも生理周期が短く、短期間の内に月経が起こる頻発月経や、経血量が異常増加してしまう月経過多などの症状により、経血として排出される血液量が増加します。これにより、体内の血液量が不足し貧血を引き起こすことがあります。

病気や何らかの異常が原因の貧血

鉄欠乏性貧血や出血性貧血の他に、病気や何らかの異常が原因で引き起こされる貧血もあります。

再生不良性貧血 骨髄の異常によって血液が正常に造られずに起こる貧血症状。難病に認定されている。
鉄芽球性貧血 ヘモグロビンの合成時に異常が起きて、ヘモグロビンを生成できずに起こる貧血症状。鉄分を摂取しても症状が改善しない。
溶血性貧血 赤血球が何らかの要因で破壊されることで起こる貧血症状。先天性と後天性がある。
巨赤芽球性貧血 ビタミンB12または葉酸の欠乏が原因で起こる貧血症状。正常な赤血球が合成できなくなる。
腎性貧血 慢性腎不全などに併発する貧血症状。腎不全を起こすことでホルモン分泌に異常が起こり、骨髄に造血指令を送るホルモンが分泌されず、血液量が減少してしまう。

女性の貧血は何科を受診する?

貧血症状で病院を受診する場合、「何科を受診すればいいんだろう?」と悩む人は少なくありません。一般的には消化器科や内科を受診しますが、女性の場合は婦人科も候補に入れて検討するとよいでしょう。

それぞれの診療科を受診すべき特徴などを紹介します。

婦人科

月経のある女性や、更年期障害などの症状が見られる女性、閉経間際の女性の場合は婦人科を受診してみるのがよいでしょう。月経のある女性は貧血症状を引き起こす割合が比較的高く、更年期障害や閉経間際も自律神経の乱れやホルモンバランスの変化によって貧血症状を起こしやすい傾向にあります。

その他、以下のような婦人科系疾患が原因で貧血を起こしている可能性もあります。

子宮筋腫

子宮にできる良性腫瘍で、女性の約3割は子宮筋腫があると言われています。子宮筋腫が子宮内腔にできる粘膜下筋腫になると、筋腫が小さくても過多月経などを引き起こしやすく貧血の原因になります。

子宮筋腫について

子宮腺筋症

子宮腺筋症は、子宮の筋層部に子宮内膜様の組織ができてしまう症状で、子宮内膜症の一種です。過多月経を引き起こし貧血の原因になります。

子宮内膜増殖症

子宮内膜増殖症は、子宮内膜が異常増殖を起こす症状で、過多月経や過長月経を引き起こし貧血の原因になります。

子宮頸がん・子宮体がん

子宮頚部や子宮内膜にがん(悪性腫瘍)ができた場合、腫瘍から慢性的な出血が起きたり、月経異常を起こすことで貧血症状が見られることがあります。また、がんが進行すると食欲低下などによる栄養不足によって鉄欠乏性貧血を起こす可能性もあります。

子宮頸がん・体がんについて

消化器科

月経に問題が無く、定期的に婦人科検診などを受けている場合は婦人科以外を受診してみてもよいでしょう。腹痛や胃痛、血便などの症状を伴う場合には消化器科がおすすめです。

消化器科では、胃粘膜の異常による鉄の吸収阻害が起こっていないか、また胃潰瘍や十二指腸潰瘍をはじめとする消化管出血が起こっていないかを調べることができます。また、血便などが見られる場合は腸や痔からの出血が起こっていないか検査することもあるでしょう。

内科

婦人科、消化器科ともに貧血の原因と考えられる症状が見つからない場合には、内科を受診してみてください。血液内科などの専門性が高い診療科を受診するのもおすすめです。

骨髄や腎臓などに疾患や異常がないか調べることができます。

女性はライフステージごとに貧血の原因が違う

女性はライフステージごとに貧血の原因が違う
女性の貧血について考える際には、ホルモンバランスやライフステージについても参考にするべきでしょう。女性は特に月経という特有の貧血要因があるため、年代による変化が起こりやすい傾向にあります。

続いては女性のライフステージによる変化と貧血の関係について解説します。

思春期

思春期には、身心が急激に成長します。身体の成長にはたくさんの血液を必要とするため、鉄欠乏性貧血を起こしやすくなるでしょう。また、思春期は全年代の中で最も運動量が多い傾向にあり、普段以上の栄養が求められます。思春期は、特にバランスのよい食生活を心掛けましょう。

思春期の女性は初潮を経て月経が始まります。ホルモンバランスが安定するのは主に20歳頃と言われています。思春期は月経の周期や月経量も不安定になりやすいため、貧血を起こしやすいでしょう。

バランスのよい食事により充分な栄養を補給するほか、サプリなどを併用して積極的にヘモグロビン合成に必要な栄養を摂取するとよいでしょう。月経が原因で貧血を起こしている場合、医師に相談すれば鉄剤などを処方してもらえることもあります。

性成熟期

ホルモンバランスが安定する20歳頃から更年期に入る45歳頃までを性成熟期と言います。性成熟期は、鉄欠乏性貧血の他、婦人科疾患、消化器疾患が原因の貧血を起こしやすい年代です。定期的な婦人科健診や健康診断、人間ドッグなどを受けるようにしましょう。

また、妊娠、出産、育児中の授乳などにより、通常よりも大量の血液が消費されるタイミングには、鉄欠乏性貧血が起こりやすい傾向にあります。授乳時期が終わっても育児によるストレスなどで、鉄の吸収阻害を起こすケースも少なくありません。子どもに栄養バランスのよい食事を与えるのと共に、自分自身も充分な栄養補給を心掛けてください。

更年期

閉経の前後5年ずつを更年期と言い、日本人女性の閉経が起こる平均年齢は50歳なので、一般的に45~55歳頃が更年期と呼ばれます。

更年期は閉経に向けて月経周期が短くなる人も多く、頻発月経による貧血を起こしやすいです。ホルモンバランスが乱れ、ホットフラッシュをはじめとするさまざまな体調不良を感じやすいため、貧血やその他の症状を感じた際には婦人科で相談してみてください。

貧血対策と共に更年期障害に対する対策を行うことで、過ごしやすくなる効果が期待できます。

更年期が終わったあと

更年期が終わると、病気が原因の貧血症状が起こりやすくなります。

特に、がん(悪性腫瘍)が原因となる貧血や、腎性貧血・鉄芽球性貧血などの血液の製造にトラブルが起きることで貧血を起こしやすいのも特徴です。貧血症状を少しでも感じた場合は受診し、しっかりと原因を突き止めることが病気の早期発見に繋がります。

【原因別】女性の貧血の対処方法

女性の貧血は原因別に対処することで重要です。今回は女性の貧血原因として多い、月経が原因の場と鉄欠乏性貧血の場合の対処方法についてみていきましょう。

月経が原因の場合

【原因別】女性の貧血の対処方法:月経が原因の場合
月経が原因で貧血を起こしている場合、低用量ピルなどを服用して月経をコントロールすることで貧血を予防できます。月経過多や頻発月経などは、月経困難症の症状のひとつです。
月経困難症と思われる症状が見られる場合には、婦人科を受診して対処することで、経血量を減らし貧血を予防できます。

月経困難症について

鉄不足が原因の場合

【原因別】女性の貧血の対処方法:鉄不足が原因の場合
鉄をはじめとするヘモグロビン合成に必要な栄養が不足していることで貧血を起こしている場合は、食事やサプリなどで補うことができます。

貧血におすすめの食材

ヘモグロビンの合成には鉄、亜鉛、葉酸、ビタミンB12などの栄養が必要です。これらの栄養は以下の食材に多く含まれています。

鉄(ヘム鉄) 豚肉、牛肉、鶏肉、レバー類、かつお、いわし、まぐろなど
鉄(非ヘム鉄) 卵、しじみ、あさり、ほうれん草、小松菜、ひじき、海苔、大豆など
亜鉛 牡蠣、小麦はいが、かつお、パプリカ、牛肉、豚レバー、さば、パルメザンチーズ、ピュアココアなど
葉酸 モロヘイヤ、枝豆、ほうれん草、ブロッコリー、かぼちゃ、イチゴ、焼き海苔、納豆、ほたてなど
ビタミンB12 しじみ、いわし、あさり、焼き海苔、鶏レバー、はまぐり、豚レバーなど

ヘム鉄と非ヘム鉄
同じ鉄分でもヘム鉄と非ヘム鉄は吸収率が違います。ヘム鉄は非ヘム鉄に比べて3~5倍吸収率が高いことが分かっています。効率的に鉄分を補給するなら、ヘム鉄を多く含む食品を積極的に摂り入れましょう。

また、鉄は他の栄養素と一緒に摂ることで吸収率がアップします。
ビタミンC、動物性たんぱく質、ビタミンB群などと一緒にとることで、より効率的に鉄を補給することができるでしょう。

反対に、珈琲や紅茶、緑茶などに含まれるタンニンという成分には、鉄の吸収を阻害する効果があります。食後すぐにこれらの飲み物を飲む習慣のある人は、食後1~2時間程時間を空けるようにするのがおすすめです。

サプリ

どうしても外食が多くなる人などはサプリで重点的に貧血対策となる栄養を取り入れる方法もおすすめです。しかし、ヘモグロビンの合成にはさまざまな栄養が必要なので「鉄だけ」「葉酸だけ」など、単一の栄養素のみのサプリはおすすめできません。

なるべく、ヘモグロビン合成に必要な栄養が複数配合されているものを選ぶか、複数のサプリを併用して必要な栄養を補いましょう。

日本人女性は慢性的な鉄不足?かくれ貧血にも要注意

厚生労働省が推奨している鉄の食事による摂取基準は以下のとおりです。

年齢 月経がない場合の推奨量(mg/日) 月経がある場合の推奨量(mg/日)
18~29歳 6.0 10.5
30~49歳 6.5 11.0
50~69歳 6.5 11.0

参照:厚生労働省 鉄の食事摂取基準

一方、2019年に行われた国民健康・栄養調査によると男女混合で20歳以上の人の1日あたりの鉄摂取量は7.9mgでした。日本人の鉄摂取量は月経がある女性の推奨量を大幅に下回っていることが分かります。
参照:厚生労働省 国民健康・栄養調査 

このような慢性的な鉄不足により、いつ貧血を起こしてもおかしくない「かくれ貧血」と呼ばれる状態の女性は数多く居ます。普段から鉄をはじめとするヘモグロビン合成に必要な栄養を積極的に摂取して、貧血対策に取り組みましょう。

まとめ

今回は女性の貧血の原因について紹介しました。「ちょっと立ちくらみがしただけ」「何となく気怠いだけ」と貧血の初期症状は軽視されがちです。
しかし、貧血の原因によっては大きな病気が潜んでいたり、貧血が重症化することで日常生活に支障をきたしてしまうこともあるでしょう。

日常的な栄養補給はもちろん、貧血になった際には医師を受診し原因が何なのかを知ることも大切です。特に女性は月経があることで男性に比べて貧血になりやすいため、今回紹介した診療科を受診するなど適切な対策を行ってみてください。

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この記事の監修
エナみらいグループ理事長 石渡 瑞穂
石渡 瑞穂
エナみらいグループ理事長
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