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生理で血の塊が出てきたら異常のサイン?過多月経や病気との関連などを解説

医療法人みらいグループ
生理で血の塊が出てきたら異常?過多月経や病気との関連を解説

生理中に、レバーのような血の塊が出ることはありませんか?
生理の血液量やその状態については、なかなか他の人と比較するのは難しく、「これが正常なのか?」「みんなと同じなのか?」と不安になっている方、「こんなものだろう」と受診せずに生理がつらいままとなっている方が少なくありません。

今回は、生理中に「血の塊」が出ることについて、原因や受診の目安をお伝えします。もしかすると、「過多月経」といって治療の対象になる状態かもしれません。婦人科を受診し、生理を楽にするきっかけになれば幸いです。

生理の仕組み

生理の仕組み
生理(月経)は、エストロゲンとプロゲステロンの2種類の女性ホルモンの作用で妊娠に備えて厚くなった子宮内膜が、剥がれ落ちることです。受精卵が子宮内膜に着床した場合はそのまま妊娠が成立しますが、妊娠が成立しなかった場合、「プロスタグランジン」という子宮を収縮させる痛み物質の作用によって、子宮が収縮し子宮内膜が出血とともに排出される仕組みです。痛み物質による子宮の収縮により強い生理痛を伴うことがあります。

血の塊が出るのは異常?

血の塊が出るからと言って、すべてが異常なわけではありません。
子宮内膜がドロッとした血液とともに出るのは正常です。
しかし、血の塊が大きい場合や頻繁に出る場合、出血量の多い場合などは注意が必要です。このような状態は、「過多月経」。かもしれません。過多月経は、女性ホルモンの乱れや子宮の疾患などが原因で、通常よりも経血量が多くなり、頻繁に血の塊が出る状態を指します。深刻な過多月経の方であれば、貧血が進行し日常生活に支障をきたす可能性もあるため、注意が必要です。

過多月経のセルフチェック

過多月経かどうか、セルフチェックをしてみましょう。

  • 1〜2時間以内にナプキンやタンポンを取り替えなければならない
  • 一晩に何度も起きてナプキンを取り替える必要がある
  • 昼でも夜用のナプキンを使うほど出血量の多い日がある
  • 1回の生理の中で、レバーのような血の塊が何度も出る
  • 生理期間が7日以上である
  • 生理痛がひどい
  • 以前よりも出血量が増えてきた
  • 貧血の症状(動悸、息切れ、疲労感、頭痛など)がある

これらの質問にいくつか当てはまる場合は、過多月経の可能性が高いです。

正常な生理では、経血量は約20-140gの範囲内(※)でおさまると言われており、過多月経の基準にも140g以上の出血という目安がありますが、自分の経血量を確認するのは難しいでしょう。
実際の診断では、鉄欠乏性貧血があるかどうか、貧血症状があるかどうかなどを元に判断することが多いです。
過多月経の影響で貧血が進行すると、動悸、息切れ、疲れやすい、頭痛などの症状が出てくる場合があります。「経血が漏れるのでは?」という不安がつきまとうことや、ナプキンなどにコストがかかることも厄介です。

もし当てはまる症状がございましたら、ぜひ、婦人科でご相談ください。

※ 参考:日本産婦人科医会

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過多月経の原因となる病気とは?

過多月経には、何らかの病気が隠れているかもしれません。しっかり検査をして、病気を見つけ、それに合った適切な治療をすることが大切です。
検査方法としては内診、超音波検査が一般的です。疾患が判明した場合にはMRI検査や子宮鏡検査などを追加することもあります。過多月経の原因となる代表的な疾患には次のようなものが挙げられます。

子宮筋腫

子宮筋腫の図解
子宮筋腫は、子宮内に良性の腫瘍ができる病気で、過多月経の原因となることがあります。
筋腫の位置や大きさによって、症状の程度は異なりますが、子宮内膜の近い場所に発生する「粘膜下筋腫」という種類の場合、大量の出血や血の塊を伴いやすいです。子宮筋腫は女性ホルモンの影響を受けて徐々に大きくなるため、生理を繰り返すたびにだんだんと出血量が増えていきます。
出血量が多いだけでなく、強い生理痛や不妊や流産の原因になることもあり、治療が必要になることがあります。

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子宮腺筋症

子宮腺筋症の図解
子宮腺筋症は、子宮内膜のような組織が子宮筋層に発生する病気で、これも過多月経や生理痛の原因となります。子宮腺筋症も子宮筋腫と同様に、女性ホルモンの影響を受けて少しずつ進行していき、子宮の筋層が厚く大きくなっていく病気です。
40代以降で出産経験のある方に多い傾向にあります。掻爬手術、帝王切開、筋腫の手術など子宮内膜に触れるような手術を経験した人にも多い傾向があります。
症状があまりない方もいらっしゃいますが、生理痛が強くなる方も多く過多月経症状も伴えば治療が必要になります。

子宮内膜ポリープ

子宮内膜ポリープの図解
子宮内膜ポリープは、子宮内膜にできる良性の腫瘤(デキモノ)で、過多月経を引き起こすことがあります。また過長月経(月経が8~10日以上続くこと)や不正出血の原因になることがあります。
子宮内膜ポリープは無症状のことも多く、治療は必須ではありませんが、過長月経や過多月経でお困りであれば治療をおすすめしています。

子宮頸がん・子宮体がん

子宮頸がん・体がんの図解
生理中の出血量が増えてきただけでなく、生理期間が長くなり、不正出血も起きるようになったという場合には、子宮頸がんや子宮体がん、子宮内膜増殖症も疑います。
子宮頸がんは20代後半ごろから、子宮体がんは40代ごろから増えてくる疾患です。検診を受けていない方は、検査をおすすめします。
月経が増えたり長くなったり不正出血が続く場合には早めの婦人科受診をお勧めします。

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女性ホルモン分泌の乱れ

女性ホルモンの分泌が安定していないことも、過多月経の原因の一つになり得ます。ホルモンの調整がうまくいかないと、子宮内膜が過剰に成長し、経血量が増えることがあります。
10代の方はまだホルモンバランスが整っていないため、経血量が多くなっても不思議ではありません。年齢とともによくなっていくことが多いですが、学業やスポーツの妨げになって困るようであれば治療を始めてもよいでしょう。
また、更年期(40代〜50代)で女性ホルモンの分泌量が減ってきた場合にも、経血量が増えてしまうことがあります。

血液凝固の異常

まれなことですが、通常よりも出血が止まりにくい病気のために過多月経となっている方もいます。フォン・ヴィレブランド病、血友病類縁疾患、白血病や血小板減少性紫斑病といったものが代表的です。

過多月経の治療法

過多月経の治療としては、貧血に対する治療(鉄剤投与など)やホルモン治療や外科的治療があります。血液疾患が原因である場合は血液内科医師による治療が優先されます。

ホルモン治療

①低用量ピル

低用量ピルの写真
卵胞ホルモンと黄体ホルモンの2種類の女性ホルモンが含まれた薬を、1日1回、決まった時間に服用します。排卵を抑制し経血量を減らすだけでなく、生理痛や月経前症状(PMS)の緩和、生理不順の改善などさまざまなメリットもあります。
ただし血栓症のリスクがあるので喫煙者や40歳以降の方にはお勧めしません。

②黄体ホルモン(プロゲスチン)療法

黄体ホルモン製剤を1日2回、決まった時間に服用します。内因性のエストロゲンを抑制し子宮内膜の増殖を抑制するので生理痛や過多月経を改善させる効果があります。血栓症のリスクがないため低用量ピルの内服が難しい方にも使用できます。
子宮腺筋症に対し治療適応になりますが不正出血のコントロールが困難なこともあります。

③偽閉経療法

脳の下垂体から分泌される卵巣を刺激するホルモンを低下させ閉経と同じような状態にする治療方法です。内服薬と注射剤による治療があります。
治療を開始すると月経がない状態になるため過多月経症状は改善しますが、更年期様の症状が出ることもあります。

④ミレーナ(子宮内黄体ホルモン放出システム)

ミレーナ(子宮内黄体ホルモン放出システム)の子宮内留置時の図解
月経困難症や過多月経の治療として、保険適用で使用できます。子宮の中に32mmの柔らかいプラスチック製の器具を留置することで約5年間、黄体ホルモンを持続的に作用させることができます。子宮内膜を薄い状態に保てるため、経血量を減らせるだけでなく、生理痛の緩和の効果が期待できます。ただし筋腫で内腔が変形している方は適応にならないこともあります。分娩経験のない方は留置が困難である場合もあります。

外科的治療

外科的治療には子宮摘出術、子宮筋腫(腺筋症)核出術、マイクロ波子宮内膜凝固術などがあります。病態に応じた選択をします。

まとめ

今回は、「生理で血の塊が出る」という状態について、原因や対処法をご紹介しました。経血量が多いのは「過多月経」という状態で、様々な治療により改善が期待できます。
ご自身の生理の状態について、少しでも「つらい」「なんとかしたい」という気持ちがあれば、お気軽にご相談ください。

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この記事の監修
勢多 真理子
エナ女性クリニック日本橋 院長
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