2022年4月よりHPVワクチンの積極的勧奨が再開されました。HPVワクチンについては、接種後の副反応を心配される方も少なくありませんが、HPVワクチンは安全性が確認されており世界的にも接種が推奨されています。
ぜひ、HPVについての正しい知識や、ワクチンを打たない場合のリスクなどを考え接種を検討してください。
HPVとは
HPV(ヒトパピローマウイルス)は、皮膚病や性感染症などの原因となるウイルスです。HPVは皮膚に感染するものと、粘膜に感染するものがあり、性行為を経験している女性の約50%は、何らかの粘膜性HPVに感染しているといわれています。現在100種類以上のHPVが確認されており、それらの多くは人間が本来持つ免疫で排除可能な微弱なものです。
しかし、中には病気を誘発したりがん化したりするハイリスクなHPVが存在することが分かっています。
HPVが引き起こす可能性のある病気
HPVは以下の病気の原因となる可能性があります。
- いぼ
皮膚の傷などからHPVが感染していぼが生じる - 尖圭コンジローマ
HPVが感染した粘膜部位にイボなどができるウイルス性性感染症 - がん
子宮頸がん、肛門がん、膣がん、口腔がん、陰茎がんなど
いぼや尖圭コンジローマは多くの場合、良性で自然治癒することもある病気です。しかし、ハイリスク型のHPVに感染してしまうと、自覚症状のないまま数年から数十年かけてがん化する可能性があります。
特に、子宮頸がんの95%はHPVが原因と言われており、年間約1万人が罹患、約2.800人が亡くなっています。
HPVワクチンとは
HPVワクチンでは、特にがん化するリスクが高いと言われているHPV16型とHPV18型に対する抗体を獲得することを目的としています。これらのHPV感染を予防することで、子宮頸がんリスクは50~70%防ぐことができます。
日本で承認されているHPVワクチンの種類
2023年現在、日本で承認されているHPVワクチンは2価、4価、9価の3種類です。それぞれ、予防対象となるHPVの種類が異なります。当院では4価、9価のHPVワクチンを取り扱っております。
2価ワクチン(サーバリックス)
がん化するリスクの高いHPV16型、18型への感染を予防するワクチン
※当院では取り扱っておりません
4価ワクチン(ガーダシル)
がん化するリスクの高いHPV16型、18型に加え、尖圭コンジローマの原因となりやすいHPV6型、11型への感染も予防するワクチン
9価ワクチン(シルガード9)
HPV16型、18型に加え、同じくがん化するリスクが高いとされるHPV31型、33型、45型、52型、58型と、尖圭コンジローマの原因となりやすいHPV6型、11型への感染も予防するワクチン
HPVワクチンの安全性について
HPVワクチンは2013年に定期接種の対象となったものの、さまざまな副反応の報告を受けて積極的勧奨が中止される事態に陥りました。患者さまの中にも記憶に新しい方は多く、HPVワクチンの安全性について不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、2018年6月に発表されたHPVワクチンと副反応の関連性を調べた大規な疫学調査・研究によると、副反応として報告された重篤な症状の発生とHPVワクチンの関連性は確認できなかったとされています。HPVワクチン先進国とされるアメリカ、オランダ、フランス、フィンランドなどにおいても、統計学的に有意な副反応リスクの上昇は確認されていません。
HPVワクチンには一般的な予防接種と同等の副反応がみられるものの、これらのリスクよりもワクチン接種によるメリットが上回ることをWHO(世界保健機構)でも明言しています。調査・研究結果により、HPVワクチンの安全性についての懸念が認められないとし、2022年4月より積極的勧奨が再開されました。
HPVワクチンの副反応
HPVワクチンの副反応には以下の症状があります。
- 疼痛
- 発赤
- 患部の腫れ、かゆみ
- 頭痛
- 腹痛
- 関節痛
- 発熱など
可能性のある重大な副反応として、アナフィラキシー、気管支痙攣、蕁麻疹、ギランバレー症候群、血小板減少性市販病、急性散在生脳脊髄炎などが挙げられます。
HPVワクチンの接種スケジュール
HPVワクチンは以下のスケジュールで接種することが推奨されています。2価ワクチン、4価ワクチンは10歳から、9価ワクチンは9歳から接種可能です。
2価ワクチンの場合
1回目接種から1カ月後に2回目を接種。さらに6ヵ月後に3回目の接種を受ける。
4価ワクチン・9価ワクチンの場合
1回目接種から2カ月後に2回目を接種。さらに6ヵ月後に3回目の接種を受ける。
HPVワクチンはいずれも1年以内に3回の接種を終えることが望ましいです。上記のスケジュールで接種が難しい場合、医師にご相談ください。
HPVワクチンキャッチアップ接種とは
HPVワクチンは2013年に定期接種の対象となりました。そのため、小学校6年生から高校1年生相当の年齢の女性は、HPVワクチンを公費負担(無料)で接種できます。
しかし、積極的勧奨が中止されたことで接種の機会を失った方も多く、政府では「キャッチアップ接種」として、接種機会を逃した方に向けた政策が行われることになりました。
キャッチアップ接種の対象は以下のとおりです。
当院は東京都中央区のキャッチアップ接種実施医療機関です。キャッチアップ接種をご希望の方は、ご予約のうえ中央区から送付された予診票をご持参ください。
詳細は東京都中央区のホームページをご確認ください。
HPVワクチンは大人も接種できます
HPVワクチンは、HPVに1度でも感染する前に接種することが最も効果的と言われているため、16歳頃までの接種が推奨されています。しかし、国内外の研究において16歳以上の接種でも一定の効果が期待できることが分かっています。
HPVは性交渉によって感染するウイルスのため、性交渉を経験する前のワクチン接種が最も有効です。しかし、性交渉を経験している人であってもハイリスク型のHPVウイルスに感染していなければ、HPVワクチンを接種することで今後の感染を予防することができるでしょう。
ただし、すでにハイリスク型のHPVに感染している場合は、HPVワクチンを打ってもウイルスの排除などはできません。大人の方でHPVワクチンの接種を検討している場合、子宮頸がん検診を事前に受けておくことをおすすめします。詳しくは、医師までご相談ください。
HPVワクチンの料金
定期接種の対象となっている小学校6年生から高校1年生の女子は無料(公費助成)で接種が可能です。
任意接種の方は保険適用外となり全額自己負担になります。詳細はお問い合わせください。
東京都中央区のHPVワクチン費用助成制度について
東京都中央区在住のキャッチアップ接種対象の方(1997年4月2日から2007年4月1までに生まれた方)がワクチンを自費接種した場合、中央区より費用接種の助成を受けられます。
申請には接種費用の支払い領収書が必要です。発行した領収書は大切に保管してください。当院では、領収書の再発行は致しかねますのでご了承ください。