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生理痛・月経困難症について

医療法人みらいグループ

月経困難症とは、月経(生理)に伴って起こる不快な症状のことです。女性の方ならほとんどが、一度は生理の最中にお腹が痛くなったり、イライラしたりといった症状をご経験されたことがあると思います。これがあまりにひどく、日常生活に差し障りが出るような状況になっても「女性はみんな体験していることだから」と我慢している方がとても多いです。実は月経困難症は、適切な治療を行えば、症状を大きく改善させることができる病気です。

月経困難症とは

月経困難症とは、生理の時に起こる病的な症状のことです。生理の時に少々の下腹部痛や腰痛が見られるのは誰しもご経験があると思いますが、月経困難症の場合は、日常生活に支障が出るレベルの症状が現れます。

月経困難症の症状

月経困難症の一番の症状は、生理痛(生理の時に起こる下腹部の痛み)です。生理痛の程度は個人差が大きいですが、ひどい場合は、冷や汗が出るほどの激しい痛みを感じます。症状の重い方は、生理の時には毎回数日間寝込んでしまうほどの痛みが出ます。

生理痛の他の症状としては、多いものから順に腰痛、腹部膨満感、嘔気、頭痛、疲労・脱力感、食欲不振、いらいら、下痢、憂うつなどがあります。

月経困難症の分類

月経困難症は、原因となる病気がある器質的月経困難症と、原因となる病気がない機能性月経困難症に分けられます。
比較的若い女性に多い症状であり、就業女性の28.6%が強い月経痛を感じているとする報告もあります。

器質的月経困難症

器質的月経困難症の原因となる病気のうち、最も多いのが子宮内膜症です。そのほかの原因としては、子宮筋腫、子宮腺筋症の順で多いです。

機能性月経困難症

機能性月経困難症

機能性月経困難症は、明らかな病気がないのに生理痛などの重い症状が見られる場合のことをいいます。機能的月経困難症の原因と考えられているものには、以下のようなものがあります。

プロスタグランジンの過剰分泌

プロスタグランジンは、子宮内膜から分泌されるホルモンです。プロスタグランジンは子宮を収縮させ、生理のときに剥がれ落ちた子宮内膜を月経血として身体の外に出す役割がありますが、プロスタグランジンの分泌量が多すぎると、必要以上に子宮が収縮し、下腹部痛や腰痛の原因となります。

子宮頸管が狭い

子宮頸管とは、子宮と膣をつなぐ部分のことです。出産時に赤ちゃんの通り道となる場所です。若い方や出産経験のない方はこの部分が狭くて硬いため、生理で出た月経血がスムーズに送り出せないことがあります。

出産によって生理痛が軽くなった方は、このタイプの方が多いとされています。また、出産経験はなくとも、年齢とともに子宮が成熟すると症状が軽くなることが多いです。

身体的・精神的なストレス

身体的・精神的ストレスも、機能的月経困難症の原因と考えられています。過労や睡眠不足はもちろんのこと、きつい冷房で身体が冷える、仕事で長時間立ちっぱなしなどの状態が続くと、身体的ストレスがかかります。運動不足も生理痛の一因です。

また緊張や人間関係のトラブルなど、精神的なストレスも重い生理痛の原因となります。若い女性に月経困難症が多いのは、ストレスとの関連があるとする報告も見られます。

月経困難症の診断

月経困難症の診断は、問診が重要です。どんな症状がいつ出るのか、生理の周期と関係がありそうかどうか、持病があるかなども大切な情報です。下記にあげた表は、器質的月経困難症と機能的月経困難症の特徴を比較したものです。

機能性月経困難症 器質性月経困難症
原因
プロスタグランジンによる子宮の収縮、骨盤内の充血、過多月経による経血の排出困難、子宮発育不全、ストレスなど
子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、子宮の形態異常、性器の炎症、クラミジア感染など
発症時期
初経後1、2年頃から
初経後10年頃から
多い年齢
10代後半~20代前半
20~40代
痛みの時期
月経開始前後や月経時のみ
月経中だけでなく月経時以外にも生じる
治療法
薬物療法(鎮痛薬、ホルモン薬、漢方薬)
精神面の指導
原因となっている病気の治療
(薬物療法、手術)
機能性月経困難症
プロスタグランジンによる子宮の収縮、骨盤内の充血、過多月経による経血の排出困難、子宮発育不全、ストレスなど
初経後1、2年頃から
10代後半~20代前半
月経開始前後や月経時のみ
薬物療法(鎮痛薬、ホルモン薬、漢方薬)
精神面の指導
器質性月経困難症
子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、子宮の形態異常、性器の炎症、クラミジア感染など
初経後10年頃から
20~40代
月経中だけでなく月経時以外にも生じる
原因となっている病気の治療
(薬物療法、手術)

その上で、月経困難症の原因となり得る病気がないかを調べます。内診や超音波検査、血液検査のほか、性感染症の検査などを行います。必要に応じてMRI検査などの画像診断を追加します。

月経困難症の治療

月経困難症の治療は、器質的月経困難症と機能的月経困難症で異なります。

原因となる病気がある器質的月経困難症の場合は、子宮内膜症や子宮筋腫など、それぞれの病気に応じた治療を行います。

機能性月経困難症の場合、まずは生理痛を抑えるための痛み止め(NSAIDs:非ステロイド系消炎鎮痛剤)が用いられます。NSAIDsが効かない場合や避妊を希望する場合は、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)やジェノゲストをはじめとする黄体ホルモンなど、女性ホルモン剤処方することもあります。症状が重く長期的な避妊を希望する方については、子宮内避妊具であるミレーナ(LNG-IUS:レボノルゲストレル放出子宮内システム)を用いることもあります。

また必要に応じて漢方薬や鎮痙剤(ちんけいざい:子宮の収縮を抑える薬)が用いられることもあります。

自分でできる月経困難症の対処法

月経困難症の方におすすめのセルフケアを紹介します。

1.下腹部や腰を温める

下腹部や腰を温めて骨盤周りの血液の流れが良くなることで、痛みを軽くする効果が見られます。

2.規則正しい生活習慣(運動・睡眠・食生活)

適度な運動も、同じく骨盤周りの血液の流れを改善し、生理痛に効果があるとされています。ジョギングやヨガ、ストレッチなどの軽い運動で構いませんので、毎日の習慣にすると良いでしょう。適度な運動は、ストレスの解消にも効果的です。
また、十分な睡眠とバランスの良い食生活を心がけましょう。

3.市販の痛み止め

市販の痛み止めを使用するのも良い方法です。ただし、薬の用法・用量は正しく守るのが条件です。薬の飲み過ぎは、薬剤乱用性頭痛など他の病気を引き起こしたり、副作用の原因となります。用法・用量を守れないほど痛み止めが必要な場合は、婦人科の受診を強くお勧めします。
痛み止めを飲む時のコツは、早めに飲むことです。痛みが頂点に達してから飲んでも、思ったような効果が見られないことがあります。「少し痛いかな」くらいで飲むのがおすすめです。

病院を受診する目安

生理にまつわる症状で病院を受診する目安は、日常生活に支障が出ているかどうかです。生理痛をはじめとした生理にまつわる症状は個人差がとても大きいため、他の人が大丈夫だから自分も大丈夫、ということにはならないのです。

生理痛のおおまかな目安としては、一般的には生理が始まった日及び2日目は軽い痛みを感じる方が多いです。大抵の場合、3日目を過ぎると痛みが徐々に軽くなる傾向にあります。3日目を過ぎても痛みが全く良くならない場合は一度病院を受診してみると良いでしょう。

また自分ではそれほど気になっていない場合でも、以下に当てはまるものがあれば、婦人科の受診をお勧めします。

  • 以前よりも明らかに生理の際の痛みが強くなっている場合
  • 生理ではない日にも痛みがある場合
  • 1週間以上生理が続く場合
  • 生理の際の出血量が極端に多くレバー状の血の塊が出てくる場合
  • 生理が不規則である場合

定期的な検診で、早期発見を

生理の時の辛い症状でお悩みの方は多いですが、実際に病院を受診される方はとても少ないのが現状です。生理は確かに毎月規則的に訪れるものですが、その時の辛い症状まで我慢する必要はありません。生理について気になることがありましたが、ぜひお気軽に当院までご相談ください。