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腟カンジダを繰り返してしまう...再発しやすい理由や予防法などを解説

医療法人みらいグループ
腟カンジダを繰り返す…再発しやすい理由や予防法などを解説

腟カンジダ症は、多くの女性が一度はかかると言われるほど、ありふれた感染症です。再発してしまうことも多く、急な症状でお困りになる女性は少なくありません。
今回は、腟カンジダ症について、原因や予防法、区別の必要な疾患など幅広く解説していきます。

腟カンジダ症とは?

腟カンジダ症は、女性の多くが人生で一度は経験する真菌感染症です。この感染症は不快な症状を引き起こすものの、適切な治療により十分にコントロール可能な疾患です。

腟カンジダ症の原因

腟内でカンジダが増殖する要因
腟カンジダ症の原因は、カンジダという真菌(カビの一種)の過剰な増殖です。実は、健康な女性の腟内にも少量のカンジダ菌は常在していますが、通常は腟内の常在菌であるデーデルライン桿菌(善玉菌)によって環境が良好に保たれ、カンジダの増殖は抑制されています。実際、20%前後の女性はカンジダを保有していると言われていますが、ほとんどの方は症状が出ておらず、治療は必要ありません
しかし、ホルモンバランスの変化、心身の疲労の蓄積、抗菌薬の使用など、何らかの要因で腟内の環境が乱れると、カンジダ菌が急激に増殖し、症状が現れるようになります。カンジダによって症状が現れれば「腟カンジダ症」や「カンジダ外陰腟炎」などと呼ばれる状態となり、治療が必要です。

腟カンジダ症は、性感染症ではなく、誰でも罹患する感染症です。性交経験のない方にも起こりえます。女性の75%は生涯のうちに一度は罹患すると言われるほど、ありふれた疾患です。

腟カンジダ症の症状

外陰部と腟内のカンジダによる症状
腟カンジダ症の症状は特徴的で、一度発症したことのある方なら「これは腟カンジダ症かもしれない」とわかることも多いです。

  • 外陰部の強いかゆみ、ヒリヒリ感
  • おりものの量が増える
  • おりものの性状の変化(ポロポロとしたカッテージチーズ状 ドロドロしたヨーグルト状)
  • おりもののにおいが強くなる

症状の重い方は、歩行時の不快感、排尿時や性交時の痛みを感じることもあります。

腟カンジダ症が再発しやすい理由

腟カンジダ症は、非常に再発しやすいという特徴があります。カンジダは常在菌の一種であり、完全に排除することはできず、うまく付き合っていかなければなりません。自身の腟内環境が乱れてしまえば、カンジダの過剰な増殖を抑えられずに、腟カンジダ症を発症してしまいます

腟カンジダ症を発症する原因である腟内環境の乱れには、生活習慣も関わります。よくない生活習慣を続けていれば、再発もしやすいということです。腟カンジダ症を再発させないためには、生活を見直す必要があります。

腟カンジダ症になりやすい方の特徴

体調不良の女性
腟カンジダ症の発症リスクを高める要因は多岐にわたります。繰り返してしまう方は、なりやすい要因がないかどうか、確認してみましょう。

ホルモンバランスの変化

ホルモンバランスの変化によって、腟カンジダ症を生じやすくなります。
たとえば、妊娠中は通常とホルモンバランスが異なることや、生理がないことで腟や子宮内の自浄作用が低下していることなどが原因で、腟カンジダ症になりやすいです。生理の前後に腟カンジダ症を発症しやすい方もいます。

心身のストレス

体の疲れ、寝不足、精神的なストレスなどによって、体力や免疫力が低下し、腟カンジダ症の発症につながることがあります。無理の多い生活、不規則な生活を続けていて、腟カンジダ症を繰り返してしまうという方は、生活を見直してゆっくりとリラックスすることが大切です。

抗菌薬の使用

感染症の治療のために抗菌薬を使用した際に、腟内の細菌までダメージを受けてバランスが崩れ、カンジダの増殖を抑え込むことができずに腟カンジダ症を起こしてしまうことがあります。腟カンジダ症になってしまったからといって、必要な抗菌薬を自己判断で中断はせずに処方した医師に相談しましょう。

おりものシートやナプキン、オムツの長時間使用

おりものシートやナプキン、オムツなどを交換せずに長時間使用していると、素材が水分を吸って、陰部が蒸れてしまいます。カンジダは高温・多湿の環境を好むため、こまめに交換して衛生的に保たなければ、カンジダが過剰に増殖してしまうのです。通気性の悪い・締め付けの強い下着や洋服も、よくありません。

洗いすぎ

においを気にして陰部を洗いすぎることで、腟内細菌のバランスが崩れ、腟カンジダ症などを起こしてしまう可能性もあります。洗浄力の強い石鹸を使う、ウォシュレットを毎回使う、腟内にシャワーのお湯を入れて洗うなどの「洗いすぎ」には注意が必要です。

糖尿病の方、免疫抑制剤を使用している方

こうした方は、免疫力が低下している状態となるため、カンジダが増殖しやすい傾向があります。症状も広範囲に出ることがあり、腟内や外陰部だけでなく、足の付け根のあたりまで広がるケースもあります。

高齢者

ご高齢の方は、体力や免疫力の低下によって外陰部にカンジダ症を起こすことがあります。また、先述したように糖尿病をお持ちの方や免疫抑制剤の使用をしている方、オムツを着用している方など、カンジダが増殖しやすくなる複数の要因をお持ちになる方も多いです。

性行為

腟カンジダ症は、必ずしも性行為と関係があるわけではないため性感染症には位置づけられていませんが、性行為がきっかけとなることや、性行為により悪化することはあります。

元々常在菌としてカンジダを保有していない方も一定数いますが、性行為によってカンジダが体内に定着するケースもあります。
また、性行為の際に性器や手などが不衛生だった場合、腟内環境が乱れ、腟カンジダ症を起こすこともあります。
腟カンジダ症を発症しているときの性行為は、皮膚や粘膜が刺激を受けることで症状の悪化を招くことも多いです。治療が終わるまで、性行為を控えましょう。

腟カンジダ症と類似の疾患

下腹部に手を添える女性
腟カンジダ症と似たような症状の出る疾患はいくつかあり、治療法も異なります。きちんと区別し正しく治療するためにも、症状のある方はお早めに婦人科の受診をおすすめします。

細菌性腟症

細菌性腟症は、腟内の細菌叢のバランスが崩れることで生じる病態です。腟カンジダ症と同様に、性感染症ではありません。おりものは白〜灰色で、独特な強いにおい(生ぐさい魚のようなにおいや酸っぱいにおい)があります。腟カンジダ症と比べると、かゆみは弱く、おりものはサラッとした傾向にありますが、自覚症状だけでの区別は難しいでしょう。
抗生物質の腟錠や内服薬を7日間程度使用することによって症状は改善します。

萎縮性腟炎

萎縮性腟炎は、更年期や閉経後の女性に多い病態です。エストロゲンの低下によって腟粘膜が萎縮することが原因で、乾燥感やヒリヒリ感、性交痛といった症状があらわれます。あまりおりものの量は増えないことが多く、少量の不正出血などが伴うこともあります。乾燥症状の訴えが多い点は、腟カンジダ症との違いです。
エストロゲンの局所投与などで治療ができますので、症状がある方は婦人科でご相談ください。

性感染症

性感染症の中には、腟カンジダ症と似たような自覚症状を示すものがあります。症状だけで、原因を判断するのはとても難しいです。性行為の数日後から自覚症状が出てきたという場合には、検査をおすすめします。パートナーと同時に治療をおこないましょう。

トリコモナス腟炎

トリコモナス腟炎は、トリコモナス原虫による感染症で、黄緑色~黄色の泡状のおりものが特徴的です。陰部のかゆみやヒリヒリ感は腟カンジダ症とも似ていますが、排尿時痛などが伴うこともあります。
10〜20%程度、あまり症状のない方もいます。内服薬や腟錠で10日間ほどの治療が必要です。

クラミジア感染症

クラミジアは、日本では最も多い性感染症です。自覚症状がなく気がつかないまま症状が悪化しているケースもあります。
症状がある場合は、水っぽいおりものの増加や下腹部痛、不正出血などの症状が挙げられます。感染が子宮頸部から子宮内膜や卵管にまで広がることもあります。さらに広がると右上腹部の強い痛みや発熱を呈したり、不妊につながったりすることもあり、厄介な感染症です。
軽症であれば内服薬で治療可能ですが、重症の方は入院加療や点滴での治療が必要な場合もあります。

淋菌感染症

淋菌感染症は、クラミジアと同時に感染していることも多い性感染症です。あまり症状が強くなく、おりものが少し増加したり、下腹部痛や性交時痛を感じたりといった症状が出ます。半数程度の方は無症状ですがクラミジアと同様、感染が広がってしまうと右上腹部の痛みや発熱を呈することもあります。

抗菌薬の注射薬投与を1回おこなう治療法が主流ですが、薬の効きにくいケースも増えてきています。

腟カンジダ症の治療

錠剤と塗り薬
腟カンジダ症の治療には、外陰部のかゆみに対しては外用薬(塗り薬)を用います。
抗真菌成分の含まれた軟膏やクリームを1日数回塗布して、外陰部の症状を抑えます。ステロイド剤は症状を悪化させることがあるため、一般的には使用しません。医師の指示に従ってください。
おりものの量が多いなど腟内の症状がある場合は、抗真菌成分の腟錠も併用します。毎日ご自身で挿入するタイプと、医療機関で1回挿入して数日間効果が持続するタイプとがあります。
また腟錠挿入が難しい場合は内服薬もあります。
正しく治療をおこなえば、1週間程度で症状はおさまりますが、10%前後の方は再発したり、再発を繰り返すことで薬が効きにくくなったりする可能性があります。なかなか改善しない場合には再度受診して、治療方針の変更などを相談しましょう。また、自覚症状がおさまったとしても、医師の指示通りの期間は治療を続けてください。

腟カンジダ症を予防するために

朝、寝起きにベッドで体を伸ばす女性
腟カンジダ症を予防するために、日常生活で工夫できる点をいくつかご紹介します。

規則正しい生活をする

寝不足や疲労は、体の抵抗力を落として、腟カンジダ症のリスクを高めてしまいます。
規則正しく、体に負担をかけすぎない生活を心がけましょう。よく眠り、しっかり食べるなど、健康的な生活を送ることが重要です。

陰部の「蒸れ」を解消する

陰部が蒸れていると、カンジダが繁殖しやすくなります。締め付けの強い洋服、通気性の悪い下着などを避けましょう。また、ナプキンやおりものシートはこまめに交換し、同じものを付けたままにしないことも大切です。

洗いすぎない

陰部を清潔にすることは大切ですが、においを気にして洗いすぎることは逆効果です。また、市販の「腟洗浄剤」のようなものを多用している方は、控えましょう。ウォシュレットやシャワーの水を腟内に入れて洗うという方もいますが、かえって腟内環境を乱してしまいます。
お湯で軽く流す、デリケートゾーン専用のやさしい石鹸を使うなど、気をつけてください。

性行為ではコンドームを着用

カンジダを保有していない方は感染する可能性があるため性行為ではコンドームを着用しましょう。特に、疲れが溜まっているときには注意が必要です。
コンドームだけで完全にカンジダの感染を防ぐことはできませんが、ある程度の予防効果は得られます。

膣内環境を整えるサプリメントを摂取する

膣内環境を整えることによりカンジダ菌を増やさないことが大切です。特に再発を繰り返す場合は、膣内環境を整え膣の自浄作用を高めるサプリメントの使用を考えても良いかもしれません。

まとめ

多くの女性が一度は罹患する「腟カンジダ症」について、さまざまな観点から解説しました。腟カンジダ症は再発も少なくありませんが、似たような症状の疾患もいくつかあります。
原因を突き止めて適切な治療をするためにも、おりもの等の症状がある方は婦人科を受診しましょう。また再発を繰り返す方は、生活習慣を見直してみてください。

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この記事の監修
勢多 真理子
エナ女性クリニック日本橋 院長
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