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細菌性腟炎(細菌性腟症)は自然に治るの?症状や原因、治療法を解説します

医療法人みらいグループ
細菌性腟炎(細菌性膣症)は自然に治るの?

デリケートゾーンのにおいやかゆみ、おりものの量が増えるといった症状は、多くの女性の悩みのタネです。一時的な症状の場合もあれば長引く場合もあり、病院へ行くべきか、判断に迷うこともあるでしょう。

おりものの変化は、なんらかの疾患のサインかもしれません。今回は、「細菌性腟炎(細菌性腟症)」に着目し、原因や症状、治療法などをご紹介します。

細菌性腟炎(細菌性腟症)とは?

正常な腟内の状態と異常な腟内の状態
女性のデリケートゾーンに起こる不快な病態の1つが「細菌性腟炎(細菌性腟症)」です。腟内の自浄作用の低下によって、常在菌のバランスが崩れ、悪玉菌が優勢になることで、腟内の炎症やおりものの異常が生じます。性行為がきっかけになるケースもありますが、性感染症ではありません。性行為の経験のない方でも、細菌性腟炎を起こすことはあります。

通常、健康な腟内には、体にとって良い菌(善玉菌)と悪い菌(悪玉菌)がどちらも存在し、その人に固有の「腟内フローラ」を作り上げています。腸内環境と同じように、腟内も細菌のバランスが大切なのです。
善玉菌の一種である「デーデルライン桿菌」という乳酸菌が多数存在することで、弱酸性の環境を保ち、病原菌の侵入や、雑菌の過剰な増殖を防いでいます。

しかし、抗菌薬の使用やホルモンバランスの変化、不規則な生活習慣、デリケートゾーンの洗いすぎなどによって腟内フローラのバランスが崩れると、「バクテロイデス属」などの悪玉菌が増殖し、細菌性腟炎を引き起こすことになります。

細菌性腟炎(細菌性腟症)の症状

細菌性腟炎(細菌性膣症)の症状 おりもの、デリケートゾーンの違和感、性交痛
細菌性腟炎では、次のような症状があらわれます。

  • 灰白色・黄白色のおりもの
  • おりものの強いにおい(生臭い、魚臭いなどと表現されることも)
  • デリケートゾーンのかゆみ、ヒリヒリ感
  • 腟内の違和感
  • 性行為時の痛み

症状の程度には個人差があるため、中にはほとんど無症状の方もいます。ごく軽い細菌性腟炎は自然に軽快していき、治る場合もありますが、ほとんどのケースでは自然治癒は難しく、医療機関での治療が必要です。

気になる症状があれば、お早めに婦人科でご相談ください。

細菌性腟炎(細菌性腟症)の原因をチェック

先ほどもご説明した通り、腟内は常在菌によって環境が作られており、善玉菌が弱酸性の環境を維持することによって、悪玉菌の過剰な増殖を防いでいます。善玉菌・悪玉菌のバランスが崩れ、悪玉菌が過剰に増殖すると、細菌性腟炎の発症リスクが上がります。
ここからは腟内の常在菌のバランスを崩す行動や要因についてご紹介しますので、思い当たるものがないか確認してみましょう。

ストレス・疲労が溜まっている

疲れている女性 ストレス、生活リズムの乱れ
生活リズムが不規則であったり、寝不足、精神的な負担、体の疲れが溜まっていたりすることで、免疫力が低下しやすくなります。免疫力の低下をきっかけに、細菌性腟炎を起こす方は多いです。

生理用品やおりものシートの間違った使用

生理用ナプキンやおりものシートを、交換せず長時間着用していませんか?
こうした商品は水分を吸収する性質があるため、血液やおりものの他、汗も吸収し、陰部が蒸れる原因になってしまいます。

抗菌薬の使用

感染症の治療で抗菌薬を使用したとき、腟内の細菌にも多少の影響があります。抗菌薬の服用によって腟内フローラが乱れ、細菌性腟炎になる方は少なくありません。

洗いすぎている

石鹸 デリケートゾーンの洗い過ぎ
おりものの量やにおいを気にして、洗いすぎていませんか?
おりものは、まったくの無臭ではありません。少し酸っぱいようなにおいがするのは、正常です。また、生理周期に合わせて量や色味、においは多少変化します。
頻繁に洗うことで腟内フローラが乱れ、細菌性腟症を起こすという悪循環になっている可能性もあるでしょう。

細菌性腟炎(細菌性腟症)の診断

細菌性腟炎の診断のためには、内診とおりものの検査が必要です。この後にご説明するように、細菌性腟炎と似たような症状を呈する疾患がいくつかあります。それらの疾患と区別するために、おりものの性状を目視で直接確認するだけでなく、検査をおこなって原因を突き止めることが大切です。

細菌性腟炎(細菌性腟症)と似た症状の疾患

細菌性腟炎と似たような症状を呈する疾患はいくつかあります。ここでは、代表的な3つをご紹介します。自己判断が難しいケースが多くありますので、症状がある際には婦人科でご相談ください。

腟カンジダ症

腟カンジダ症は、カンジダ属というカビの一種によって引き起こされる感染症です。カンジダそのものは「常在菌」といって、多くの方が元々体内に持っているもので、通常はなんの症状も起こしません。しかし、抗菌薬使用、妊娠、糖尿病、疲労の蓄積など、免疫力が低下するような事態をきっかけに腟内フローラのバランスが崩れ、カンジダが異常増殖すると、症状を呈するようになります。

腟カンジダ症の症状

  • チーズや酒粕のようなポロポロとした性状の白いおりもの
  • おりものが増える
  • おりもののにおいが強くなる
  • 外陰部の強いかゆみ、ヒリヒリ感
  • 排尿時痛
  • 性交時の痛み

腟カンジダ症の治療

抗真菌成分の腟錠や内服薬やクリームを使用して治療します。
腟錠は、医療機関で1回挿入して効果が数日持続するタイプと、ご自身で毎日1回挿入していただくタイプがあります。
過去に医療機関で「腟カンジダ症」と診断され治療をしたことのある方で、再発を疑う症状がある場合に限り、薬剤師から説明を受けて市販薬で治療をすることができます。

トリコモナス腟炎

トリコモナス腟炎は、「トリコモナス原虫」による感染症です。性行為が主な原因ですが、共用の湯船やトイレの使用で感染するケースもあります。そのため、性交経験のない小さなお子さんも、感染することが稀にあります。

トリコモナス腟炎の症状

  • おりものが泡状で黄色〜緑色へ変化する
  • 強い悪臭のするおりものが増える
  • 外陰部のかゆみ、ヒリヒリ感

トリコモナス腟炎の治療

トリコモナス腟炎は、抗原虫薬を1週間〜10日程度内服して治療します。腟以外の部位にも感染が広がることがあるため、内服薬での治療が推奨されています。

萎縮性腟炎

主に更年期〜閉経後の女性にみられる腟炎です。あまりご存じでない方もいますが、非常に多くの方が萎縮性腟炎の症状に悩まされています。
エストロゲンの分泌低下に伴って、腟粘膜が薄くなり、乾燥・萎縮することが原因です。感染症ではなく、自然な変化とも言えますが、次のような不快な症状が現れる場合は、ケアをしてあげるとよいでしょう。

萎縮性腟炎の症状

  • 腟の乾燥、ヒリヒリ感
  • 外陰部のかゆみ
  • 性交痛
  • おりものの増加
  • おりものの色の変化(黄色や緑など)
  • 不正出血
  • 下着が食い込む
  • 頻尿

萎縮性腟炎の治療

エストロゲンの配合された腟錠の使用で、症状の軽減が期待できます。デリケートゾーン用の保湿剤でこまめにケアをするのもよいでしょう。

細菌性腟炎(細菌性腟症)の治療

細菌性腟炎が疑わしいと思われる場合、抗菌成分の腟錠で治療を開始します。一般的に市販薬で完治することは難しいです。
治療をせずに放っておくと、炎症が腟から子宮頚管、子宮内膜、卵管と広がっていき、「骨盤内炎症性疾患(PID)」と呼ばれる病態へ進行してしまうことがあります。PIDになると、腹痛や発熱、性交痛などの症状が重篤化し、治癒にも時間がかかるため、早めの対処が必要なのです。

細菌性腟炎(細菌性腟症)の予防法

細菌性腟炎(細菌性膣症)の予防 生活リズムを整える、陰部の蒸れに気を付ける、洗い過ぎない、性行為に注意、腟内環境を整える
細菌性腟炎は、生活習慣などとも関連するため、繰り返してしまう方が少なくありません。不快な症状を起こさないため、次のような点に注意してみてください。

生活リズムを整える

不規則な生活、睡眠不足などで疲労が蓄積すると、体の抵抗力を低下させることになり、細菌性腟炎のリスクが高くなります。生活リズムを整え、しっかり休息をとるようにしましょう。

陰部の「蒸れ」に気をつける

陰部が蒸れると、雑菌が繁殖しやすい環境になってしまいます。ピタッとした洋服、通気性の悪い下着などを避けましょう。コットンなどの天然素材のものは、通気性がよくおすすめできます。
また、ナプキンやおりものシートは水分をよく吸収するため、陰部が蒸れる原因です。こまめに交換し、同じものを長時間付けたままにしないようにしましょう。汚れていなくても、トイレへ行くたびに交換するのがベストです。

洗いすぎない

おりものの量やにおいを気にして、洗いすぎている方も多いです。ですが、洗いすぎは、かえって腟内環境を乱す原因になる場合もあります。お湯で軽く流す程度でも十分です。洗う場合は、デリケートゾーン専用の優しい石けんで洗うとよいでしょう。
市販の「腟洗浄剤」のようなものや、ウォシュレットも、腟内環境のためには使用は控えるべきです。

性行為にも注意を

細菌性腟炎は性感染症ではありません。ですが、性行為をきっかけに腟内環境が乱れることはあります。たとえば、性行為の際、お互いの手や性器が不衛生だった場合に、腟内で雑菌が繁殖し、細菌性腟炎を起こすことが考えられます。性行為の前には、手や体を清潔にしましょう。
また、100%ではありませんが、コンドームを着用することで細菌性腟炎の再発を抑えられる可能性があります。

腟内環境を整える

今ご紹介したようなことに気をつけていても、腟内環境が乱れやすい方はいます。そういった方は、腟内環境を維持するために乳酸菌をとることも1つの方法です。食事で発酵食品などを積極的にとるか、デリケートゾーンケアのために作られたサプリメントの活用もよいでしょう。

まとめ

今回は、2〜3人に1人の女性が一生のうちに一度は罹患する「細菌性腟炎(細菌性腟症)」について解説しました。おりものの量やにおいが変化するほか、陰部のかゆみなどの不快な症状が特徴です。細菌性腟炎と似たような症状が出る別の疾患もいくつかあるため、何か異変を感じたら早めに婦人科を受診しましょう。
繰り返してしまう方も多いため、治療をするだけでなく、生活を見直すことも必要になります。ご紹介した注意点を意識してみてください。

\ 新日本橋駅徒歩3分。月~土祝19時。日曜17時まで診療 /

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この記事の監修
勢多 真理子
エナ女性クリニック日本橋 院長
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