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動悸やだるさ、鉄欠乏性貧血が原因かも?婦人科系の病気が見つかることも

医療法人みらいグループ
不調の原因は鉄欠乏性貧血化も?婦人科系の病気が見つかることも

「階段を上ると息切れや動悸がある」 「疲れやすい」そんな症状は、貧血のサインかもしれません。
貧血にはいくつかのタイプがあります。中でも頻度が高く、女性に多い「鉄欠乏性貧血」は、女性の生理周期にも関わりのあるものです。
今回は、鉄欠乏性貧血に着目し、原因や対処法などをご紹介します。症状に心当たりのある方は、ぜひ医療機関でご相談ください。

鉄欠乏性貧血とは?

まずは、鉄欠乏性貧血について解説 します。

貧血というのは、「血液が足りない」というイメージがあるかもしれませんが、正確には血液中の赤血球数が減ることにより体が酸素不足になることとされています。

血液中の赤血球の中には「ヘモグロビン」という成分が含まれておりこれが全身に酸素を運ぶ役割を担っています。
ヘモグロビンを作るためには鉄が必要になるため、体内に鉄が不足するとヘモグロビンを十分に作り出すことができず、結果として酸素をたくさん運ぶことができなくなります。体内の鉄分が不足することによりさまざまな貧血症状が現れる状態を鉄欠乏性貧血といいます。

鉄欠乏性貧血の症状

体調不良の女性
鉄欠乏性貧血に陥っている場合、次のような症状が出てきます。

  • 疲れやすい
  • 動悸・息切れ
  • 顔の血色が悪い
  • 眼瞼結膜(眼のふち まぶたの裏) が白い
  • 頭痛・ 耳鳴り
  • 爪が薄く、もろくなる
  • 舌炎(舌がしみる感覚、ざらざらする感覚)
  • 口内炎

一部の症状は、鉄欠乏以外の原因による貧血でも生じるため、症状だけで「原因は鉄欠乏だ」と言い切ることはできません。上記のような症状がある場合には、検査してみましょう。

鉄欠乏性貧血の原因は?

鉄欠乏性貧血を起こしてしまう原因として、主に考えられるものについてご紹介します。

月経時の出血が多い

腹痛で病院を受診する女性
生理時の出血量が多い過多月経の方、生理の期間自体が長い過長月経の方などは、生理の出血が原因で鉄欠乏性貧血を繰り返すことがあります。

女性の鉄の推奨摂取量は、20代以降で1日あたり約11mg(※)です。生理期間中は、摂取した鉄分が経血としてどんどん失われているということになります。
月経量が多ければ毎月の 生理に伴って鉄が不足するというのも、イメージがしやすいのではないでしょうか?
また、子宮筋腫、子宮内膜ポリープ 、子宮頸がんや子宮体がんなどの疾患によって慢性的に不正出血があり、貧血になるというケースも少なくありません。そうなれば、生理期間中だけでなく、常に鉄が不足した状態となってしまいます。

婦人科的な疾患以外では、痔、胃や腸のポリープ、潰瘍、などによって慢性的な出血をきたすことで、鉄欠乏性貧血につながるケースが見受けられます。
慢性的な貧血の場合、酸素不足を補おうと心臓がオーバーワークをするため、心臓の負担にもなり、危険です。
厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)

ダイエットによる栄養不足

ダイエットや自己流の食事制限によって栄養バランスが偏り、鉄が不足している方も少なくありません。ご自身の食生活の中で、必要な食品を摂れているか振り返ってみてください。
どんな食品を摂取すればよいかは後述します。

成長期 (思春期)、妊娠中、授乳中

成長期の子どもや思春期 、妊娠中・授乳中の方は、そうでない方と比べて多くの鉄が必要です。そのため、そうでない方と同じだけの量を摂取していても、鉄不足になってしまうことがあります。

成長期(思春期)は、身長が伸び、筋肉や血液の量も増えて、さまざまな栄養がたくさん必要になる時期です。そのため、鉄に限らず、不足にならないようしっかり栄養を摂る必要があります。10〜14歳の鉄の推奨摂取量は約14mgと、成人女性より3mgも多いです。

妊娠中も血液の量が増えるため貧血になりやすく、赤ちゃんの体づくりのためにも鉄が通常よりも多く必要になります。授乳中も母乳を作るため鉄が不足しやすい状態です。意識的に食事やサプリメント、薬剤などで補給する必要があります。

鉄の吸収不良や慢性的な炎症

十分量の鉄を摂取しているのに鉄欠乏性貧血を呈している方は、摂取した鉄をうまく体内に吸収できないために鉄欠乏性貧血となっているかもしれません。
たとえば、胃や十二指腸の切除術後やクローン病や潰瘍性大腸炎などの腸の疾患、長期にわたる感染症などが挙げられます。

鉄欠乏性貧血の診断

鉄欠乏性貧血は、採血でいくつかの項目を確認して診断します。主にみているのは、次の3項目です。

ヘモグロビン(Hb)(g/dl) 総鉄結合能(TIBC)(µg/dl) 血清フェリチン (ng/ml)
鉄欠乏性貧血 <12 ≧360 <12
貧血のない鉄欠乏 ≧12 ≧360または<360 <12
正常 ≧12 <360 ≧12

ヘモグロビン(Hb)は、定期的な健康診断などでも測定する値です。酸素を運ぶためのヘモグロビンが、実際にどの程度血液中にあるかを確認します。
成人女性では、一般的にヘモグロビン値が12 g/dL未満の時に貧血と診断します。

総鉄結合能は、最大でどの程度の鉄を血液中で運搬できるかという指標です。鉄は、トランスフェリンというタンパク質にくっついて、血液中を巡ります。鉄が少ないと、「もっとたくさん鉄を運ばなければ」と体が判断して、トランスフェリンを増やします。その結果、鉄欠乏性貧血の方では、総鉄結合能の値が大きくなるのです。360µg/dl以上だと鉄欠乏と判断します。

血清フェリチンは、体の中に鉄を保管しておくためのタンパク質です。鉄は、ある程度体の中に「貯蔵鉄」として蓄えられており、不足してくると貯蔵鉄からも使用されます。鉄欠乏性貧血の方は、摂取した分の鉄だけでは量が足りずに貯蔵鉄も使用しているため、血清フェリチンの値が小さくなります。フェリチン値が12ng/ml未満の時は治療が必要と判断します。

鉄欠乏性貧血の治療法

鉄欠乏性貧血とわかった場合、一般的に行われる治療法をご紹介します。

原因疾患の治療

鉄欠乏性貧血の治療は、まずその原因を取り除くことから始まります。
たとえば、過多月経や子宮筋腫が原因であれば、婦人科で適切な治療を受けることが重要です。鉄を補充したとしても、根本的に出血がおさまっていなければ、貧血の治療をやめることはできません。婦人科で鉄欠乏性貧血の治療も並行しておこなえることが多いですので、生理のお悩みがある方、不正出血が続いている方は早めに婦人科を受診してください。

消化器系の出血が原因の場合は、内科や消化器科で診断を受け、必要な治療を行います。原因を特定して治療することで、鉄分の喪失を防ぐことができます。
栄養不足が原因であれば食事の見直しが必要です。

子宮筋腫の詳細はこちら

鉄の補充

医薬品として、鉄を補充します。どの製剤でも多少の副作用があるため、副作用が合わない場合には別の製剤を試します。内服薬には以下のような薬剤があります。

製品名 先発品名称 服用方法 特徴
クエン酸第一鉄ナトリウム フェロミア錠50mg 1日1〜2回食後
  • 安価
  • やや胃への負担が大きい
乾燥硫酸鉄 フェロ・グラデュメット錠105mg 1日1〜2回空腹時または食直後
  • 安価
  • ゆっくり効果を発揮するため胃への負担が少ない
フマル酸第一鉄 フェルムカプセル100mg 1日1回
  • 1日1回でよい
  • カプセルがやや大きいため人によっては飲みにくい
  • ゆっくり効果を発揮するため胃への負担がより少ない
クエン酸第二鉄水和物 リオナ錠250mg 1日1〜2回食直後
  • 胃への負担は最も少ない
  • 他の製剤と比較するとやや高価

※内服薬で消化器症状が強い場合や重症貧血の場合は鉄剤の注射剤での治療も選択できます。重症貧血の場合は輸血が必要となることもあります。

鉄剤内服剤のよくある副作用

どの製剤でも、頻度の差はあれ以下のような副作用を生じることがあります。

  • 胃もたれ、胸やけ
  • 吐き気
  • 腹痛
  • 便秘

飲み方や薬の種類を変えることで副作用を和らげることができますので、副作用症状がある場合は医師へご相談ください。
また、鉄の影響で便が黒くなることがありますが、健康上は問題ありません。

栄養バランスの見直し

栄養のバランスも少しずつ是正していくことをおすすめします。栄養バランスを見直さなければ、根本的な解決にはならないためです。鉄を摂取するため、ご紹介する4つのポイントを意識してみてください。

1日3食、規則正しく

食事をしている女性
鉄が不足している方は、食事の全体量が足りていないことも多いです。まずは、1日3食をきちんと食べて、摂取カロリーが不足しないようにしましょう。
とくに、近年は忙しさを理由に朝食を食べない方がいるほか、一部ではファスティングなどの食習慣が流行したこともあり、食事の回数が少ない方が増えてきています。
栄養を不足なくとるためには、1日3食をしっかり食べることが基本です。

鉄やビタミンの摂取量を増やす

3回の食事を取る中で、鉄や、鉄の吸収を高めるビタミンの多い食材を選んでみましょう。

動物性食品に含まれるヘム鉄は、植物性食品に含まれる非ヘム鉄よりも吸収効率がよいです。動物性食品については、過度な食事制限をしないよう、食事内容を見直してください。

ヘム鉄(吸収率15〜20%) レバー、牛ヒレ肉、アサリ、かつお、卵、鶏もも肉
非ヘム鉄(吸収率2〜5%) 豆腐、納豆、小松菜、ほうれん草、切り干し大根
ビタミンの多い食材 <ビタミンC>
オレンジ、キウイフルーツ、いちご、柿、ブロッコリー、パプリカ、かぼちゃ
<ビタミンB12>
シジミ、アサリ、イワシ、さんま、のり、レバー、チーズ、卵

タンパク質もしっかりと

タンパク質は、筋肉の材料というイメージが強いかもしれませんが、赤血球を作る材料にもなるため、貧血対策としても重要です。
また、先ほどの表でもご紹介したように、肉・魚といった動物性のタンパク質には、鉄分も豊富に含まれます。毎食、必ずタンパク質を取るように意識してみてください。
また、間食でタンパク質をとるというのも1つの方法です。チーズ、ヨーグルトなどの乳製品や、きなこ、小魚、卵など、簡単に食べられるタンパク質を用意してみてはいかがでしょうか。

加工食品は控えめに

手軽にとれる加工食品ですが、あまり頻繁に利用していると貧血の原因となってしまうことがあります。含まれている食材がわかりにくくなること、タンパク質やビタミンが不足しがちになることに加え、添加物の「リン酸」が鉄の吸収を阻害することがあるのです。
可能な範囲で、加工食品を食べる頻度を減らしてみましょう。

まとめ

今回は、女性に多い「鉄欠乏性貧血」について、原因や対処法をご紹介しました。
生理の出血量が多い・期間が長い方、不正出血の頻度が多い方や、貧血のような症状がある方は、早めに婦人科を受診してください。原因に合わせて必要な治療をおこなうこと、食事を見直すことで、改善が見込めます。

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この記事の監修
勢多 真理子
エナ女性クリニック日本橋 院長
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