生理にまつわる症状の緩和や避妊などに服用される低用量ピルですが、健康保険が利用できる場合とできない場合があります。
この記事では、低用量ピルに保険が適用される条件や保険適用で処方してもらえるピルの種類、自費購入が必要なピルとの違いや料金なども解説します。普段からピルを服用している人や、これからピルの服用を検討している人は、自分のピルが保険適用されるのか知っておくとよいでしょう。
低用量ピルとは
低用量ピルとは、低用量の女性ホルモンを含むホルモン剤です。
主に以下の目的で処方されます。
- 避妊
- 生理にまつわる症状の緩和(月経困難症・月経異常・PMS・PMDDなど)
- 子宮の症状の改善(子宮内膜症など)
- 生理日の移動
その他、子宮体がんの予防やニキビの症状改善など、低用量ピルはさまざまな目的で服用されます。
低用量ピルの中には保険適用されるピルとされないピルがある
月経移動やピルの休薬期間などを除くと、低用量ピルは原則として毎日服用します。服用を止めると緩和した症状が戻ってしまうケースも非常に多いため、金銭的な負担となることもあるでしょう。
そこでよく聞かれるのが「低用量ピルは薬なのだから、保険が適用されるのでは?」という質問です。
低用量ピルは確かに薬です。
そのため、医師の診察を受け、医師が「病気の治療の一環として低用量ピルの服用が必要」と判断し処方したものに関しては健康保険が適用されます。
現在日本では、月経困難症・子宮内膜症の治療を目的としてピルを服用する場合は保険が適用されます。
一方で、妊娠は病気ではないと判断されるため、避妊を目的とする場合は健康保険適用外となります。月経移動なども病気を治療する訳ではないので、同じく保険適用外です。
●健康保険適用
月経困難症・子宮内膜症の治療や症状緩和
●健康保険適用外
避妊、肌荒れの改善、月経移動など
保険適用の有無によって違う2種類の低用量ピル
これまで低用量ピルを服用したことのある人の中には「LEP」「OC」といった言葉を耳にする機会もあったのではないでしょうか。
この2つのピルは、保険適用となる「医療用ピル」と保険適用外で自費となる「避妊用ピル」を区別するものです。それぞれの違いについてもみていきましょう。
保険適用のピル「LEP」
月経困難症や子宮内膜症の治療や症状の緩和に用いられる低用量ピルをLEP(low dose estrogen-progestin)と呼びます。
読み方は「レップ」。生理に関わる症状の緩和に適した低用量のホルモン薬(エストロゲン、プロゲステロン配合)です。
LEPには以下の種類があります。
- ルナベルULD
- フリウェルULD
- ルナベルLD
- フリウェルLD
- ヤーズ
- ヤーズフレックス
- ドロエチ
- ジェミーナ
それぞれに服用方法やホルモンの種類・配合量に違いがあり、低用量ピルとの相性や、症状緩和に必要なホルモン剤などを考慮して処方されます。
保険適用外の自費ピル「OC」
避妊を目的として服用する低用量ピルをOCと呼びます。読み方は「オーシー」。月経移動などに用いるのも主にOCです。
OCはOral Contraceptiveの略称で、日本語では経口避妊薬という意味です。避妊効果が認められる薬剤として承認を受けており、排卵の抑制以外にも受精卵が着床しにくい状態を保つなどの効果が期待でき、正しく内服できていれば99%と高い確率で避妊可能です。
OCには以下の種類があります。
- シンフェーズ
- トリキュラー
- アンジュ
- ラベルフィーユ
- ファボワール
- マーベロン
それぞれ黄体ホルモンの種類や含有量が異なり、それにより避妊以外の面でも副効用として生理痛やPMSの緩和、ニキビ改善なども期待できます。
保険適用ピル(LEP)と自費ピル(OC)の成分の違い
もともと、ピルは避妊効果が期待できる経口薬として服用されてきました。女性主体で行える効果的な避妊方法として、世界中で活用されています。つまり、ピルは長い間OCだけだったのです。
ピルが初めて経口避妊薬としてアメリカで認可されたのは1960年代でした。当時のピルはホルモンの配合量が多く避妊効果があるものの、静脈血栓塞栓症をはじめとした重大な副作用を起こす確率が高いことが問題でした。そこで、ホルモン量を減らし、より安全で効果的に服用できるように改良が続けられた結果生まれたのが、現在の低用量ピルです。
研究を重ねる中で、ピルは配合するホルモンの種類によって避妊以外にもさまざまな効果が現れることが分かってきたことがLEP誕生のきっかけといえるでしょう。
LEPとOCはどちらも卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の合剤というところは同じですが、例えば、ルナベルやフリウェルはノルエチステロンというホルモンが配合されており、経血量を減少させる特徴があります。月経過多などの症状緩和に効果が期待されるものの、頭痛や吐き気などの副作用があらわれやすいのが特徴です。
一方ヤーズは、ドロスピレノンというホルモンを含み、ホルモン量が少なく副作用が現れにくいため、ルナベルやフリウェルの服用が難しいという人に適しています。
このように、全てOCから始まったものですが、その中で生理にまつわる症状緩和が期待できるものが病気の治療や症状緩和のためにLEPとして使用されているのです。
低用量ピルを保険適用にする方法
LEPは保険適用の低用量ピルですが、だからといってLEPとして承認を受けている低用量ピルを選べば保険適用になるという訳ではありません。
LEPはあくまで、医師が治療や症状改善のために必要と判断した場合にのみ、処方されるものです。医師の診察を受けて、必要に応じた検査などが求められることもあるため、LEPの処方を希望する人は産婦人科を受診して生理にかかわる症状について相談してください。
保険適用ピルについてのよくある質問
最後に、低用量ピルの保険適用についてよくある質問をみていきましょう。
どうしてOC(避妊ピル)は保険適用外になるの?
妊娠を望まない女性にとって、OCを服用して効果的な避妊を行うのは大切なことです。しかし、妊娠は病気ではないため、妊娠を防ぐためのOCも保険適用にはなりません。
保険適用の低用量ピルの料金は?安いの?
病気の治療目的の場合は健康保険が適用されるため3割負担で受診、処方を受けることができます。
種類によりますが、一番安価なものでは1シート約800円~のピルもあります。
避妊目的の場合は自由診療になるため、患者様が全額負担することになります。
自由診療で処方されるピルはクリニックによって価格が異なりますが、大体1シート2,000~3,000円が相場です。薬代とは別に、初診料や診察料が必要になる場合もあります。
これだけ見ると、「保険適用ピル=安価」と感じるかもしれませんが、病気の治療を目的としているため必ず診察を受ける必要があり、薬代とは別に初診料・再診料、検査料、処方料、薬剤情報提供料などがかかります。治療の経過を確認するため、定期的に診察が必要になる場合もあります。
一方で自由診療では、簡単な問診と服用方法の説明を受けるだけで低用量ピルの処方を受けられることも多いです。
診察料や検査費用などを合算すると、自由診療の低用量ピル処方と保険適用の低用量ピル処方、実はかかる費用が同じくらいになるケースも少なくありません。
「本当は避妊用の低用量ピルが欲しいけど、生理痛を改善したいと言って保険適用で受診しよう」と安易に考えず、低用量ピルの処方を希望する場合は目的に合わせて受診し、適切な処方を受けましょう。
LEP(保険適用ピル)に避妊効果はないの?
LEPはOCから派生して生まれたものです。結論からいうとLEPにも避妊効果が期待できるといえます。
しかし、LEPは月経困難症や子宮内膜症の治療や症状緩和の効果が認められて承認を受けた薬剤であって、避妊効果については副効用の扱いになります。つまり、LEPには月経困難症や子宮内膜症を改善させる効果があり、その効果の影響で服用中は妊娠しにくくなっているということです。
保険適用になるのは低用量ピルだけ?IUSは適用されないの?
生理にかかわる症状を改善する方法として広く知られている低用量ピルですが、実は低用量ピル以外にも生理症状の緩和などを行うことのできるものがあります。
それがIUSやIUDなどの子宮内避妊器具です。これらの器具を子宮内に装着し、受精や着床を防ぐことで避妊効果が期待できます。IUSやIUDは、子宮内膜症や月経困難症に対する効果も認められており、医師が症状の改善のために必要と判断した際は保険が適用されるケースもあります。
病気の治療用ピルならオンライン診療でも保険適用されるの?
近年、自宅に居ながら医療や薬の処方を受けられることで人気のオンライン診療。低用量ピルの処方にオンライン診療を利用する人も増えて来ました。
オンライン診療でも、医師が病気の治療に必要と判断した場合には、保険適用のLEPが処方されます。しかし、治療に必要かどうかを判断するには、問診だけでなく内診やさまざまな検査が必要です。
そのため、対面での診察履歴が必要なケースがほとんどでしょう。産婦人科医会は、少なくとも初回は対面で診察をおこなうよう推奨しています。病院で検査を受け、医師の判断で必要として処方された低用量ピルであれば、次回以降オンライン診療でも処方できるとするケースが比較的多いです。
また、オンライン診療では保険適用外のOCのみ処方というところも少なくはありません。
まとめ
低用量ピルの保険適用について解説しました。低用量ピルの効果を最大限に引き出すためには、休薬期間を除いてほとんど毎日の服用が必要です。毎月低用量ピルを購入することを考えると、保険が適用されて費用が抑えられる方がよいと思う人も多いでしょう。
健康保険による医療費や薬剤処方の費用補助は税金によって賄われているため、病気にかかわるものや医師が必要と判断したものにしか適用されません。生理痛の緩和など、避妊以外の目的で低用量ピルを服用したい場合には、必ず医師の診察を受けて処方してもらうようにしましょう。
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