萎縮性腟炎とは？デリケートゾーンのつらい症状や治療法を解説

2025.10.17

「デリケートゾーンがヒリヒリする」「下着が擦れて痛い、食い込む」そのようなお悩みのある方は、もしかすると萎縮性腟炎という状態かもしれません。
特に閉経を迎えた女性に多く見られる症状です。この記事では、萎縮性腟炎の原因、症状、治療法について詳しくご紹介します。

萎縮性腟炎とは？

萎縮性腟炎とは、老人性腟炎とも呼ばれ、女性の腟内が乾燥し、外陰部や腟が萎縮して、炎症を起こしやすい状態を指します。これは主にエストロゲンの減少が原因です。
エストロゲンはさまざまな役割を果たしており、その1つに「コラーゲンの合成を促す」というものがあります。この働きによって、肌や髪、粘膜が健康的に保たれているのです。
エストロゲンの分泌が減ってしまうと、コラーゲンが減少し、腟の粘膜が薄く、傷つきやすい状態になります。こうしてさまざまな症状を呈するようになったものが、萎縮性腟炎です。腟の分泌液の量も減って弾力を失うことで、乾燥を強く感じたり性交痛を生じる場合もあります。
また、エストロゲンが減少すると、腟内のpHを酸性に保ち細菌バランスを整える「自浄作用」が弱くなり、細菌が繁殖しやすくなるという変化も生じます。デリケートゾーンのかゆみ、おりものの性状やにおいの変化を繰り返してしまう方も多いです。

萎縮性腟炎の原因

萎縮性腟炎を生じる主な原因は、加齢です。更年期に入るとエストロゲンの分泌が急激に減少することで萎縮性腟炎の症状が現れます。程度の違いはあっても、年齢を重ねれば多くの女性が経験するといっても過言ではありません。
そのほか、抗がん剤治療後の方、卵巣を摘出した方なども、エストロゲンの分泌が少なくなることで、萎縮性腟炎を起こすことがあります。

若くても萎縮性腟炎になる場合も

萎縮性腟炎は一般的に更年期以降の女性に多いとされていますが、若い女性でも発症することがあります。たとえば、無月経や稀発月経の方、産後に生理のない期間が長い方（授乳を長く続けている方など）は、萎縮性腟炎を起こす可能性があります。生理が周期的にこない方は、女性ホルモンの分泌量が不十分である可能性もあり、萎縮性腟炎の症状でお悩みかどうかに関わらず、治療をおすすめします。
過剰なダイエット、ストレス、喫煙、低用量ピルの長期的な内服なども、萎縮性腟炎の原因となり得ます。適正体重を保つこと、リラックスして過ごすこと、禁煙することなども大切です。

萎縮性腟炎の症状

萎縮性腟炎の症状は、とても多様です。

治療ができる状態だということが、あまり知られておらず、我慢をしている方がとても多い印象を受けます。年齢を重ねれば多くの方に出る症状ですので、お気軽にご相談いただければと思います。

萎縮性腟炎の診断

萎縮性腟炎かどうかの診断には、ほかの病気の除外も必要です。
生理の状況やデリケートゾーンの症状についてお話を伺うのに加え、腟内や子宮・卵巣の状況を実際に確認し、必要であれば腟分泌液をとって感染症の検査などもおこないます。
がん検診をしばらく受けていない方は、がん検診も必要です。不正出血や性交時痛は、子宮頸がんや子宮体がんが原因のこともあります。
これらの結果を総合的にみて、萎縮性腟炎かどうかを診断します。

萎縮性腟炎の治療法

萎縮性腟炎は、適切に治療をおこなえば症状を和らげることができます。ちょっと話しにくいなと感じるかもしれませんが、多くの方が経験する症状ですので、ご相談ください。
放置していてよくなることはあまりありません。

ホルモン剤

エストロゲンを含んだ腟錠を1～2週間ほど使用することで改善することが多いです。1日1回寝る前に腟の中に腟錠を投与することで局所の状態が良くなります。
腟の症状だけでなく他の更年期症状なども伴っている場合はホルモン補充療法を選択することもあります。まず症状の確認を行い腟内の治療だけでよいのか全身の治療が適しているのかを判断します。

漢方薬

漢方薬で症状が和らぐこともあります。体質や、他の更年期障害の症状なども加味して選択します。

抗菌薬・抗真菌薬治療

萎縮性腟炎では、腟内の自浄作用が低下している影響で、細菌やカンジダなどの感染を伴っている場合も多いです。そのような場合は、抗菌薬や抗真菌薬の成分が含まれた腟錠や外用薬などを用いた治療も併用します。

ステロイドやかゆみ止めの軟膏

炎症やそれに伴うかゆみに対して、一時的な対処としてステロイドやかゆみ止めの軟膏を処方する場合があります。根本的な治療にはなりませんが、症状が強い場合にはほかの治療と併用し、改善を待ちます。
「以前もらった軟膏が余っているから」と自己判断でステロイド軟膏を使用すると、悪化してしまう場合があります。医師の指示に基づいて使用するようにしてください。

保湿剤や潤滑ゼリー

乾燥が強い場合には保湿クリームや軟膏を処方する場合があります。
また性交痛がある場合にはエストロゲンの腟錠や潤滑ゼリーをお勧めすることがあります。

乳酸菌

膣内環境を整え、膣の自浄作用を高める乳酸菌サプリメントの内服や、乳酸菌含有のデリケートゾーン専用ジェルなどの併用を考えても良いかもしれません。

モナリザタッチ（レーザー治療）

なかなか改善しない萎縮性腟炎の方には、モナリザタッチの施術も選択肢です。腟、外陰部などの萎縮している部位にレーザーを照射することで、血流の改善、細胞分裂の促進、コラーゲン再生の促進などの効果が期待されます。数回の施術である程度の効果を実感できる方が多いようです。
※当院ではおこなっておりません。

セルフケア

刺激の少ない泡状の石鹸を使用することで改善することもあります。ただしにおいやおりものが気になって洗いすぎてしまったり、トイレの温水洗浄機能を使いすぎてしまったりする方もいますが、腟炎を悪化させることがあるため注意が必要です。洗いすぎで、かえって細菌バランスが崩れてしまい、腟カンジダ症や細菌性腟炎を引き起こすことになります。においやおりものに異変を感じたら、婦人科でご相談いただくのがよいでしょう。

下着・おりものシートの工夫

あまり締め付けの強い下着ではなく、通気性がよくゆったりと履ける下着に変えることもおすすめです。デリケートゾーンが乾燥していると、下着が食い込みやすく、蒸れたり、皮膚炎を起こしたりしてしまいます。おりものシートとの摩擦も、つらく感じるかもしれません。おりものシートを使わずに過ごすことも、考えてみてください。

受診の目安

デリケートゾーンのお悩みがあっても、「ちょっと恥ずかしいから、もう少し我慢してみよう」と後回しにしてしまう方は少なくない印象です。次のような症状が気になり出したら、ほかの病気との鑑別のため、早めに受診しましょう。

おりものの量やにおいの変化がある

感染症の可能性もあるため、検査がおすすめです。感染症の場合、放置していても治りません。

性交時痛がある

萎縮性腟炎のほか、子宮内膜症や腫瘍、感染症が原因のこともあります。原因に合わせて適切な対応をとりましょう。

閉経後の出血

萎縮性腟炎が原因のことも多いですが、がんの可能性もあります。閉経後の出血は、早めに婦人科を受診することをお勧めします。

まとめ

萎縮性腟炎は、年齢とともに多くの女性にあらわれる症状です。適切な治療をおこなえば、デリケートゾーンの痛みやかゆみ、炎症などのつらい症状を改善することができます。
デリケートゾーンにお困りの症状があれば、婦人科でご相談ください。

コラム一覧に戻る