婦人科は他の診療と比べると受診経験の少ない人も多いです。そのため、婦人科系の気になる症状があったり、検診を受けたいと思っているにも関わらず、どのような検査をするのか分からず不安を感じる人もいるでしょう。特に内診に関しては痛い、怖いといったイメージを持つ人もいます。
この記事では、婦人科で行われる内診について紹介します。内診でどのような検査を行うのか、負担がかかりにくいようスムーズに内診を受けるコツなども紹介しているので、婦人科の内診に不安を感じている人はぜひ参考にしてみてください。
婦人科では必ず内診をするの?
婦人科を受診すると必ず内診を行うと思っている方も多いですが、実は絶対に行われるものではありません。
婦人科を受診した際、一番初めに行うのは問診です。
- 初経が起きた時の年齢
- 月経の頻度や間隔、期間、出血量
- 直近に起きた月経の開始日と終了日
- 月経中の症状の有無
~性行為の経験がある場合~
- 過去の妊娠回数や時期、結果、合併症の有無など
- 性行為に関してリスク(性感染症)の可能性の有無
多くの場合、事前の問診表などで回答しますが、主訴(患者様が訴えている主要な症状のこと)によってはさらに詳しく医師が質問します。
これらの問診の結果、医師が必要であると判断した場合内診が行われます。
婦人科の内診ではどんなことをするの?
婦人科の内診と言うと、分娩台に似た大がかりな診察台に乗って膣内部の触診をするイメージが強いです。しかし、内診はそれだけではありません。
最初に、内診で行うさまざまな検査について紹介していきます。
内診(双合診)
膣の中を指で触診します。同時にお腹を上から押さえて子宮や卵巣の腫れ、押さえた時に痛みがないかなどを調べます。また、指で子宮を動かすことで、子宮が正常に可動できるかなども調べています。
子宮は、靭帯で骨盤と繋がっています。そのため、前後左右さまざまな方向にある程度可動する状態が正常です。子宮の可動性が良くない場合、さまざまな疾患や病気の可能性があります。
視診
外陰部を視診することで、病変がないかを調べます。傷、湿疹、ただれ、腫れ、できもの、腫瘍など目に見える範囲に症状があらわれる病気もあります。
膣鏡診
膣鏡という診察器具を、膣内に挿入し膣壁を広げて内部まで視診を行います。膣内やおりものなどに異常がないか確認できます。
膣鏡にはクスコ式、グラベス式、コリン式、桜井式の他、コルポスコープなど種類がありますが、一般的に用いられているのはクスコ式や桜井式です。器具を挿入することで患者の負担とならないよう、年齢や状態などに合わせて膣鏡のサイズを変えることもあります。
細胞診
子宮頚部や子宮内膜の細胞を採取して、異常がないか調べます。採取にはヘラやブラシなどを用います。
膣分泌物採取
膣内のおりものを採取して、ウイルスや細菌などの有無を調べます。採取には綿棒のような専用ブラシを用います。
経腟超音波検査(経腟エコー検査)
膣内に超音波機器(プローブ)を挿入し、超音波によって子宮や卵巣の様子を映像化します。これにより、腫れや腫瘍病変の有無などを調べることができます。
経腹超音波検査(経腹エコー検査)
超音波を発するプローブをおなかの上から当てて検査する方法です。経腹エコー検査の場合は尿がたまっている状態の方が子宮をよく見ることができるので、検査前にはトイレを我慢するように指示されることがあります。下着を脱いで内診台にあがらなくても検査が可能です。
婦人科の内診で使われる器具
内診は見えない位置で行われるため、どのような器具を使われるのか不安に感じる人もいます。病院で取り扱っているメーカーなどによって機器や器具に多少の違いはありますが、内診の際に用いられる機器・器具は以下のようなものが多いです。
診察台
椅子型になっていて、着席すると電動で椅子が高い位置に上がり、背もたれが倒れます。同時に脚面が上がり左右に開きます。
膣鏡(クスコ式)
上部と下部が上下に開く仕様です。ステンレス製やプラスチック製のものがあり、潤滑剤をつけ閉じた状態で挿入します。挿入後、ゆっくり上部と下部を開いて膣内壁を押し広げ視診します。
細胞採取用ブラシ
細い棒状で細かいブラシがびっしりとついています。軽くなぞるだけで、しっかりと細胞が採取できる仕様です。
膣分泌液採取キット
綿棒状です。通常の綿棒よりも持ち手が長いです。
経膣超音波機器(プローブ)
細長い超音波を発する機器です。直径約2cmで専用のカバーと潤滑剤をつけて挿入し、超音波画像を撮影します。1~2分ほどで検査が終了するケースが多いです。
内診の種類によって診断できる病気が違う
内診にはさまざまな種類がありますが、内診を行うからといってこれら全ての検査を必ず行う訳ではありません。問診をしてどの検査を行うのか選択し、診断がつけばそこで終了です。精密に検査をしたい場合には、追加の検査を行って診断を確定することもあります。
つまり、視診や内診だけで終わる人もいれば、詳しく診察するために細胞診や経腟超音波検査を行う人もいるということです。それぞれの検査では、以下のような病気の有無が分かることがあります。
内診(双合診) | 尿検査による妊娠判定を行います |
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視診 | 尖圭コンジローマ、性器ヘルペス、外陰炎、バルトリン腺嚢腫など |
膣鏡診 | 膣炎、子宮頸管ポリープなど |
細胞診 | 子宮頸がん、子宮体癌、膣がんなど |
膣分泌物採取 | クラミジア、淋病、トリコモナス膣炎、膣カンジダなど |
経腟超音波検査(経腟エコー検査) | 子宮筋腫、卵巣腫瘍、子宮内膜症など |
婦人科の内診の受け方
ズボンの場合はズボンおよび下着を、スカートの場合はスカートは履いたままで下着を脱いでいただきます。靴下や膝下のストッキングなどは脱がなくても大丈夫です。
スカートの場合は腰上にたくしあげて内診台に座りましょう。
基本的にはカーテンで仕切られる場合が多いので、内診中に医師と患者様が顔を合わせることはありません。何をしているのか見えない方が逆に不安と感じる方は、事前に申告しましょう。また、お腹などにかけるバスタオルを用意している病院もあります。
準備ができましたら、内診台が診察しやすい高さや姿勢になるように動き(台の背中が倒れて仰向け気味になります)、両足がゆっくり開きます。力を抜いて、機械に体を任せるようにしましょう。
また、いきなり指や検査器具を入れることはございません。何を行うのか説明をし、指や検査器具を挿入する前も必ずお声がけし、患者様の様子を見ながら検査を進めていきます。
内診中・内診後に気分が悪くなった場合は、すぐに医師やスタッフに伝えてください。
婦人科の内診は痛いの?
婦人科の内診で行う検査内容や使用する器具を見ると、「こういった器具を膣内に入れるのは痛そう」と思う人も少なくないでしょう。しかし、実際はほとんど痛みを感じることはありません。ただし、多少の異物感はあるでしょう。
痛みの感覚は人それぞれなので、絶対に痛くないと断言することはできません。膣内部に炎症や傷ができていたり、緊張から力み過ぎていると余計に痛みを感じることもあります。
内診時は医師も充分な注意を払っています。潤滑油を用いて摩擦を減らしたり、機器は人肌に温めて使用するなどの配慮を持って内診を行っているので、どうかリラックスして内診を受けてください。過去に内診によって痛みを感じたことのある人は、事前に申し出ることで声掛けなど特に配慮いたします。
内診を拒否することもできる?
婦人科の内診を嫌がる人の中には、性行為の経験がなく内診に拒否感を持つ人や性暴行、過去に内診で痛い思いをするなどのトラウマによって内診を受けるのが怖い人もいるでしょう。
そういった事情をお持ちの方は、ぜひ医師に相談してください。
まず、性行為の経験がない人には内診を行わないケースが多いです。性行為の経験がない人は比較的膣内部が狭く内診が困難だからです。膣内部の狭さは個人差があるため、場合によっては内診を行うことができるケースもあります。
しかし、処女膜を破瓜しないようにする配慮などの元、お腹の表面から超音波によって子宮や卵巣の検査を行う経腹エコーや肛門から経膣超音波機器(プローブ)を挿入して検査するなどさまざまな手段を検討します。
過去のトラウマによって内診を拒否される方の場合、問診内容、症状などを精査し、できる限りの検査を行うなどご本人と相談して検査方針を決めていきます。
どちらのケースでも、どうしても必要な場合には内診の実施をおすすめすることもあります。中には、内診を行わないと正確な診断を下せない病気などもあるからです。
内診に恐怖心を抱いている場合、その気持ちを無視して検査を行うことはありません。
しかし、恐怖心は痛みなどの感覚と同様、患者様からの申告がなければ医師には正確に判断することができません。
些細なことでも不安な点があれば、お気軽に医師にご相談ください。
婦人科の内診をスムーズに受けるコツ
婦人科で内診を受ける際には、リラックスするのが一番負担のかからない方法です。しかし、具体的にどのようにリラックスすればいいのか分からないという人も少なくないでしょう。
婦人科の内診でスムーズに診察を受けるには、以下のコツを意識してみてください。
診察台に体重をかけて座る
内診の際は膝を立てて横たわるような体勢になるため、緊張すると脚に力が入りお尻が浮いてしまうことがあります。しかし、お尻が浮いてしまっている状態では腹部に余分な力が入ってしまうため、内診の際に力み過ぎて痛みを感じやすくなってしまいます。
お尻をしっかりと内診台につけておくと、比較的全身の力が抜けやすくなります。
深く息を吐く
緊張すると息を止めてしまう人も多いですが、息を止めている間は筋肉が緊張状態に陥り、内診で余計な痛みを感じやすくなってしまいます。内診が始まった時には、ゆっくりと息を吐くと筋肉が弛緩しやすく、スムーズに診察を受けられるようになります。
事前に器具を小さめにしてもらうよう伝える
内診で使う器具は、その人の体格や膣の状態などによって大きさを使い分けます。そこで、事前に小さめの器具を使ってもらうように一言添えておくとよいでしょう。
「そんな事頼んでもいいの?」と思う人も多いかもしれませんが、こういった一言を添える患者様もいらっしゃいます。医師側も理由を聞くきっかけになり、より配慮して内診を行ってもらいやすくなるでしょう。
こんな時はどうすればいいの?婦人科で内診を受ける時の疑問
最後に、婦人科で内診を受ける際に、多くの人から聞かれる疑問に回答していきます。
どのような服装で受診すればいいの?
内診の際には、下着を脱いだ状態で内診台に座ります。もちろん、個室となっているのでズボンでも問題ありませんが、スカートの方が着脱がスムーズにしやすいです。
下着を脱いでそのまま内診台にあがれる、裾をめくりやすいスカートがおすすめです。
また、経腹超音波検査をする可能性もありますので、ワンピースよりも上下が別々になっている服の方がスムーズな場合もございます。
靴下や膝下のストッキングなどは脱がなくても大丈夫です。腰履きタイプのタイツやストッキングを履いている場合は脱ぎましょう。
採血をする場合もあるので、袖をまくりやすい上着だとなお良いです。
出血していると内診はできないの?
月経による経血や不正出血等があっても内診は可能です。特に不正出血や強い子宮の痛みなどの症状がある場合は、出血していても受診する方がよいでしょう。出血がおさまるのを待つ間に症状が悪化する恐れもあります。
一方、以下の目的で受診する場合には、月経が終わるまで待った方がよいです。
- 子宮がん、卵巣がん検診を受けるとき
- 性感染症の検査を受けるとき
- ブライダルチェックを受けるとき
おりものに異常を感じて受診する際も、月経や不正出血があると膣分泌物の採取が行えず正確な検査結果が得られないことがあります。出血が収まってから受診してみてください。
膣は洗ったほうが良いの?
腟内を洗浄することで小さな所見は洗い流されてしまい、判断がしにくくなる場合があるので、洗浄する必要はありません。
内診後に出血したときはどうすればいい?
女性の膣内部は非常に傷つきやすいため、内診で少量の出血が起きてしまうことも珍しくありません。婦人科を受診する際はナプキンやおりものシートを持参しておくと安心でしょう。
内診後の出血は当日以内に収まることが多いです。万が一、翌日も出血が続いたり、出血量が段々増えることがあれば速やかに受診してください。
まとめ
今回は婦人科で受ける内診について解説しました。内診は異物感を伴う上、性器を診察してもらうことに恥ずかしさを感じるなど、多くの人が好ましくは思っていないでしょう。しかし、婦人科経疾患において内診で分かることはとても多く、病気の早期発見や診断のために重要な検査です。時には痛みや恐怖を感じていても、診断のために必要だとして内診を求められることもあります。
一時の痛みや恐怖を避ける余り、重大な病気の発見が遅れてしまうのは恐ろしいことです。不安を感じる時には、納得して診察を受けられるよう医師や看護師に相談してみてください。
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