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避妊にはどのような方法がある?効果的な方法と失敗しない為の知識をご紹介

医療法人みらいグループ
効果的な避妊方法と失敗しない為の知識をご紹介

まだ妊娠を望んでいない時期なら、避妊は非常に大切な問題です。計画的に妊娠をするということは、女性の人生においてとても重要なことですので心配しすぎということはありません。
日本では、避妊法の傾向に特徴があります。コンドームの使用率は比較的高い一方で、低用量ピルや子宮内避妊器具の使用率は欧米と比べると低水準です。コンドームは、正しい使用方法を理解できていない方も少なくありません。
そこで、今回はさまざまな避妊方法について、また、避妊にまつわる誤解について、詳しくご紹介します。正しい知識を持ち、自分とパートナーに合った避妊方法を選びましょう。

避妊に「心配しすぎ」はない

避妊についてパートナーと話そうとしたとき、「心配しすぎ」と言われてしまった、十分に話し合えなかったという方は多くいます。また、そもそもパートナーとの間で避妊の話はタブーと感じており言い出せない方もいらっしゃると思います。ですが、妊娠という大きなライフイベントが、望まないタイミングで生じてしまえば、その後の人生設計に大きな影響を与えたり、手術を受けなければいけない事態になることもあるでしょう。
妊娠は、お互いの健康や人生に密接に関わるもの。カップルのどちらかだけが避妊に気をつけるのではなく、2人で真剣に考えるのが望ましいです。

避妊の成功率は、避妊方法の種類・使用方法に大きく左右されます。
日本では、男性主体の避妊法であるコンドームだけに頼るケースが多いです。2017年の調査では、避妊方法としてコンドームを選んでいるのは大学生で97%、既婚者で81.5%、低用量ピルを選んでいるのは大学生で3.4〜7.6%、既婚者で2.7%という結果でした。
日本産婦人科医会. “避妊のコツ”.

また2021年に公表された意識調査のデータにより日本国内の避妊や性感染症への意識の低さが明らかになりました。「あなたは、これまでに、妊娠を望まない性交渉において、避妊をしなかったことがありますか。※腟外射精は避妊をしたことに含みません」という質問に対しあると答えた割合は、15-29歳の男性は24.7%、15歳~29歳の女性は33%、30-64歳の男性は44.7%、30歳~64歳の女性は44.6%との回答があり、15歳~29歳の年代では約3割、それ以上の年代では約5割が避妊をしなかった経験があると分かりました。
国際協力NGOジョイセフ(JOICFP).“性と恋愛 2021 ー避妊・性感染症予防の本音ー“.

コンドームだけでも、正しく使用できれば高い避妊効果がありますが、精度を高めるには女性主体の避妊方法も組み合わせた二重対策が推奨されます。
正しい方法を理解して実践できるよう、パートナーと一緒にこの記事を読んでいただければと思います。

避妊方法とその特徴

さまざまな避妊方法について、特徴・避妊の効果・どのような方に向いているかなどご紹介します。

避妊方法 主な作用 パール指数
コンドーム 射精後に精子が子宮内に進入することを物理的に予防する 2(人)
低用量ピル 排卵を抑制する 0.3(人)
ミニピル(スリンダ) 排卵を抑制する 0.39(人)
ミレーナ 子宮内膜を薄くして受精卵の着床を防ぐ 0.5(人)
リズム法
(安全日の腟内射精)
排卵周辺期(妊娠しやすい期間)を避けて性交渉をする 信頼できるデータなし
腟外射精 腟の外で射精をする 4〜20(人)
避妊なし 85(人)

参考:避妊方法と効果について. 国立成育医療研究センター. より

※パール指数とは:各避妊方法を1年間正しくおこなった場合に、100人の女性のうち何人が妊娠するかを表した数値。値が小さいほど、避妊の効果が高い。

コンドーム

コンドーム
最も手軽で、避妊をしたいと思ったそのタイミングからおこなえる、男性主体の避妊方法です。避妊だけでなく、性感染症の予防にもなりますので、どなたでも使用が推奨されますし、他の避妊方法と併用してほしい方法です
ドラッグストア、コンビニなどさまざまな店舗で購入でき、種類も豊富です。使用に伴う副作用も、ほぼありません。手軽でありながら、正しく使用すれば80%程度の避妊効果があります。

【向いている方】

すべての方

【向いていない方】

とくになし

低用量ピル(OC)

低用量ピル(OC)
低用量ピルは、欧米と比較するとまだ利用率は低いものの、近年は日本でも利用率が増えてきている避妊方法です。卵胞ホルモンと黄体ホルモンの2種類が配合されており主として排卵を抑制する効果が期待できます。

低用量ピルには、99%以上と高い避妊効果があるほか、次のようなさまざまなメリットが得られます。

  • 生理周期が安定する
  • 生理痛が軽減される
  • PMS症状が緩和される
  • 生理時の出血量が減る

ただし、毎日決まった時間に服用しなければ効果が十分に得られない点、開始のタイミングが決まっている点、吐き気やむくみ・血栓症などの副作用がある点には注意が必要です。
医師の診察なしに、低用量ピルを購入することはできません。婦人科を受診するか、オンラインのサービスを利用してください。

【向いている方】
  • 生理痛、PMSなど生理に伴う症状にも困っている方
  • 生理周期を安定させたい方
【向いていない方】
  • 飲み忘れが多い方
  • タバコを吸う方
  • 血栓症になったことのある方(脳梗塞など)
  • 血栓症になりやすい持病のある方(抗リン脂質抗体症候群など)
  • 片頭痛の方(とくに閃輝暗点のある方)
  • 肥満の方
  • 40歳以上の方

低用量ピルの詳細

ミニピル(POP)

ミニピル(POP)
2025年6月、日本で初めて「ミニピル(POP)」と呼ばれる種類の薬である「スリンダ錠28」が承認され、使用できるようになりました。
低用量ピルは卵胞ホルモン・黄体ホルモンの2種類が配合されていますが、ミニピルは黄体ホルモンだけが含まれた薬です。そのため卵胞ホルモンの影響で生じる血栓症・吐き気・乳房の張りといった副作用が少なくなっています。
低用量ピルが服用できない条件に該当する方も、ミニピルなら服用できるかもしれません。
ミニピルは黄体ホルモンの作用により排卵を抑制し、子宮内膜が薄くなることで受精卵の着床(内膜で受精卵が定着すること)を予防します。低用量ピルと同等の高い避妊効果があります。また、授乳中でも服用可能とされています。
1日1回、ご自身で決めた時間に1錠を24日間連続で服用し、その後4日間は薬の成分が入っていない「偽薬」を服用します。低用量ピルと同様に、偽薬を服用する期間には生理のような「消退出血」が生じます。
ミニピルをご希望の方も、必ず婦人科の受診が必要です。

【向いている方】
  • タバコを吸うなどの理由で低用量ピルを服用できない方
  • 40歳以上で生理のコントロールをしたい方
  • 長期間にわたって避妊をしたい方
【向いていない方】
  • 飲み忘れが多い方

ミニピル(スリンダ)の詳細

ミレーナ(子宮内避妊器具 IUS)

ミレーナ
以前は「避妊リング」と呼ばれていたものです。3cmほどの小さなT字型のプラスチックに、黄体ホルモン(レボノルゲストレル)が付加されており、約5年間かけて少しずつ体内に放出される仕組みになっています。

ミレーナによる子宮内膜を薄く保つ効果
子宮内膜をうすい状態に保つことで受精卵の着床を防ぐ作用があります。避妊だけでなく生理痛の緩和や出血量を減らすといった効果も期待できます。
ミレーナも、低用量ピルやミニピルと同様、99%以上の高い避妊効果があります。費用は、避妊目的の場合は自費診療となり、5〜8万円前後とやや高額ではありますが、一度装着すれば約5年間効果が続くこと、「毎日の服薬」がないことなど、メリットは大きいです。
一方、デメリットもいくつかあります。

  • 挿入時に痛みがある
  • はじめのうちは不正出血が起きやすい
  • まれに外れてしまうことがある
  • 感染症があると挿入できない

ご興味のある方は、婦人科でご相談ください。経腟分娩の経験のない方には、ミレーナをすすめていないクリニックもありますので、個別にご確認ください。

【向いている方】
  • 経腟分娩の経験がある方
  • 数年は妊娠の予定がない方
【向いていない方】
  • 経腟分娩の経験がない方
  • 数年以内に子どもを持つ希望がある方
  • 生理周期を一定にしたい方
  • 不正出血を避けたい方

ミレーナの詳細

間違った避妊方法

よく誤解されている、間違った避妊方法についてお伝えします。

コンドームは「射精時だけ」では意味がない

コンドームの正しい使用方法を知っていますか?射精しそうになったときに装着しても遅いです。射精の前に、コンドームをつけずに挿入していれば、妊娠のリスクがあります。

コンドームの正しい使用方法

コンドームの正しい使用方法

  1. コンドームを袋から出す
    コンドームに傷をつけないよう、コンドームを袋の端に寄せてから包装を開けます。
  2. 裏表をよく確認する
    裏表を間違えて装着すると、表面に精液が付着するリスクがあります。また、コンドームを傷めてしまいます。
  3. コンドームの先端をおさえて空気が入らないように装着する
    空気が残っていると、使用中に破れる原因になります。装着時は、しっかりとペニスの皮を根本まで引っ張りながら半分程度までコンドームを装着します。根本に余っている皮を伸ばすようにしながら、コンドームを根本まで下ろしてください。
  4. 射精後はコンドームの根元をおさえながら引き抜く
    コンドームをおさえずに引き抜くと、腟内にコンドームが残って精液が漏れてしまうことがあります。

コンドームの注意点

  • コンドームには使用期限があります。チェックしましょう。
  • コンドームは摩擦でダメージを受けます。財布の中などに入れずに、硬いケースにしまうのがベストです。

腟外射精は避妊にならない

コンドームを着用せずに挿入し、射精のときだけ腟から引き抜くという、いわゆる「外出し」は、避妊にはなりません。タイミング次第では、4〜5人に1人は妊娠してしまいます。
これは、射精の前に分泌される「カウパー腺液」にも精液が含まれているためです。
腟外射精はやめ、コンドームをしっかりと着用しましょう。

「安全日は中出しOK・生理中は妊娠しない」は誤解

基礎体温を計測している様子
安全日だから大丈夫、生理中なら妊娠しない、というのは、間違いです。
妊娠しにくいと思われる期間(安全日)を、リズム法等の方法で、選んで腟内射精をした場合でも、15%程度は妊娠の可能性があることがわかっています。確率が高い避妊方法とは言えません。どのような期間であっても、別の方法にて避妊はおこなう必要があります。

基礎体温(月経周期)の変化と妊娠のしやすさの関係
ちなみに安全日とはどんな日を指すのでしょうか。イラストのように基礎体温を測定していれば月経周期とおおよその排卵日が予測できます。基礎体温を測っていない場合でも月経周期が28~30日周期の方は14~16日目がおおよその排卵日と言えます。排卵の前後1週間は最も妊娠しやすい時期と考えてよいです。ただし排卵はズレることもあります。また生理の周期がほぼ順調な方は予測しやすいですが、不順な場合は排卵日の予測が難しくなります。妊娠しやすい時期に避妊をしなかった場合は望まない妊娠を招く恐れがあります。

また、生理中なら妊娠しないというのも誤解です。たしかに、一般的には排卵まで1~2週間程度の期間があるため、妊娠しにくい期間ではあります。しかし生理の出血と思っていた出血が不正出血であったり排卵期の出血である可能性もありますし、精子の寿命は約3日間と言われており、排卵が早まってしまえば、妊娠の可能性があるのです。
比較的、規則的な生理周期の方でも、排卵がズレないとは言い切れません。生理中でもしっかりと避妊が必要です。また、生理中の腟内はいつもよりデリケートであり、傷がつきやすくなっています。性感染症にもかかりやすい時期ですので、生理中の性行為は避けるのがベターです。

ビデやシャワーによる腟洗浄では避妊にならない

腟内に残った精液をシャワーなどで流すことは、避妊にはなりません。射精後、運動性の高い精子は子宮の頸管内に進入します。シャワーなどで洗い流そうと思っても、子宮内に到達した精子を流すことは非常に難しいです。
精子は「酸性」に弱いという性質から、炭酸水やレモン水なら効果があるという情報が流れていることもありますが、それも誤解です。避妊にならないだけでなく、水分を腟内に入れることで腟内環境が乱れ、腟炎を起こすリスクもあるため、腟洗浄はやめましょう。

避妊に失敗してしまったら

「コンドームが破れた!腟内ではずれた!」
「酔っていて、避妊したかどうか覚えていない…」
「性被害にあって、避妊していたかわからない」
など、避妊に失敗したり、避妊したかどうかよくわからないといったことが、あるかもしれません。
そのようなとき、性行為のあとでも緊急で避妊をおこなうことができる薬が「緊急避妊薬(アフターピル)」です。
性行為から72時間以内にアフターピルを服用すると、ある程度高い確率で妊娠を阻止することができます。服用が早いほど効果も高いため、避妊に失敗してしまった場合は早い段階で医療機関にご相談ください。

緊急避妊薬(アフターピル)の詳細

ご自身とパートナーによる二重対策が大事

カップル
性感染症の予防もできるという意味では、男性主体の避妊法であるコンドームは、避妊をしたいカップルなら誰でも使うべきです。
ただし、コンドームは思わぬトラブルが起こりえます。外れてしまった、破れてしまったというのは、どんなに気をつけていても、可能性としてゼロにはなりません。
より安全に、確実性の高い避妊方法を考えるのであれば、コンドームだけに頼らず、低用量ピルやミニピルなども併用するのがよいでしょう。
二重に対策していれば、妊娠の確率はごくわずかに抑えることができます。
今回ご紹介した避妊方法のうち、ご自身に合ったものを選び、妊娠の不安を減らすようにしましょう。どの方法がよいのか、ぜひ婦人科でご相談ください。

まとめ

避妊は、女性だけ・男性だけが考える課題ではなく、パートナーと一緒に考えるべき大切なテーマです。コンドームやピル、ミレーナなど、避妊方法にはそれぞれ特徴やメリット・注意点があります。正しい知識をもつことで、思わぬ妊娠の不安を減らし、安心して性生活を送ることができます。コンドームに、低用量ピルやミレーナを組み合わせた二重の対策を、ぜひおこなってください。

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この記事の監修
勢多 真理子
エナ女性クリニック日本橋 院長
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