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予防ワクチン接種(風疹)

医療法人みらいグループ

子どもの病気というイメージが強い風疹ですが、実は近年発症している人の多くは大人です。大人が風疹を発症すると重篤な症状になりやすい他、先天性風疹症候群という胎児の病気を引き起こしてしまう可能性もあります。風疹について正しい知識を持ち、確実に予防するためにも風疹の抗体検査や風疹ワクチンの予防接種を受けましょう。

風疹とは

風疹は風疹ウイルスが原因で起こる急性の発疹性感染症です。急に現れた症状が3日前後で治まることから、三日麻疹と呼ばれることもあります。

発症した風疹に有効な治療薬は存在しません。そのため、風疹に感染した場合、症状が治まるまで症状を緩和する対処療法がとられます。また、家庭内に風疹の抗体を持たない人がいる場合、患者の隔離なども必要となるでしょう。

風疹の症状

風疹の症状は以下のとおりです。

  • 発疹
  • 発熱
  • リンパ節の腫れ
  • 頭痛
  • 目の充血
  • 関節痛など

子どもが感染した場合、比較的軽度の症状で治まるケースが多いですが、2,000~5,000人に1人の割合で血小板減少性紫斑病をはじめとする合併症の発症が報告されています。

血小板減少性紫斑病は難病指定されている病気のひとつで、血小板が減少することで出血しやすくなり、些細な怪我でも重篤な出血状態に陥ってしまう恐れのある病気です。血小板減少性紫斑病は急性型の場合9割完治するものの、発症した人の内1割は慢性型に移行するといわれています。慢性型の場合、完治の割合は1割といわれている重篤な合併症です。

大人が風疹にかかった場合

大人が風疹に感染した場合、比較的症状が強く現れる傾向にあります。特に、発熱や発疹症状の現れる期間が子どもよりも長く続き、強い関節痛を訴える方が多いです。

また、合併症として肺炎や中耳炎、脳炎、亜急性硬化性全脳炎などを発症するケースも報告されています。

妊婦が風疹にかかった場合

妊娠中の女性が充分な抗体を持っておらず風疹になった場合、胎児は先天性風疹症候群を発症するリスクがあります。
妊娠初期であるほどリスクは高く、妊娠1ヵ月の妊婦が風疹にかかった場合50%以上の確率で胎児は先天性風疹症候群を発症するといわれています。

妊娠月数 先天性風疹症候群の発症確率
妊娠1ヵ月 50%以上
妊娠2ヵ月 35%
妊娠3ヵ月 18%
妊娠4ヵ月以降 8%以下

先天性風疹症候群を発症すると、胎児は目や耳、心臓などに障害を持って生まれる可能性が高くなります。これらの疾患で多いのは網膜症、白内障、難聴、先天性心疾患などです。その他、低体重、肝脾腫、血小板減少、精神発達の遅れ、糖尿病などの症状が現れるケースも報告されています。

風疹は大人であっても15%の割合で不顕性感染(無症状感染)を起こすことが分かっています。充分な抗体を持たない妊婦の中には自覚症状のないまま風疹に感染し、胎児が先天性風疹症候群を発症するというケースも少なくありません。

風疹の感染経路

風疹の感染経路

風疹の感染経路は「飛沫感染」「接触感染」「母子感染」の3つです。さらに症状が現れるまでの潜伏期間が2~3週間と長く、1人が風疹になると約5〜7人に感染するとも言われています。

症状が現れるまでの間、咳やクシャミなどで飛沫したウイルスが別の人に感染し拡大していくため、どれだけ予防をしていたとしても抗体を持たない限り感染のリスクが避けられません。

妊婦の場合、パートナーや同居する家族が外部で風疹に感染し、自宅へとウイルスを持ち込んでしまうケースも多く見られます。妊婦が充分な抗体を持っていない場合、先天性風疹症候群を防ぐためにはパートナーをはじめとする周囲の人にも風疹の予防が求められると言えるでしょう。

風疹の発生状況

2013年の大流行以降、風疹の発生件数は減少していました。しかし、2018年頃から首都圏を中心に風疹患者数の増加が報告されています。発症しているのはいずれも大人が多く、企業内で10人以上が感染を起こしているケースもありました。

コロナ禍によるソーシャルディスタンスやリモートワーク、外出自粛などにより2020年以降発症数は減少していますが、今後はアフターコロナとして外出や旅行などの機会が増えると予想されます。人流が増えることで、今後風疹の発生件数が増える可能性も多いに考えられるでしょう。

風疹ワクチンとは

風疹の予防として最も有効な手段は風疹ワクチンによる抗体の獲得です。風疹ワクチンの予防接種では、95%以上の確率で抗体を獲得できます。

現在、予防接種法によって風疹ワクチンの公的予防接種は、幼児期に2回と、その後の追加摂取が推奨されています。しかし、子どもの頃に抗体を獲得している人の中にも、成長するにつれて抗体が減少し、風疹に対する充分な抗体を維持できていない人も少なくありません。

また、以下に当てはまる人はこれまで充分な風疹ワクチンの接種機会が少なかった可能性があり、特に注意が必要です。

公費によるワクチン接種が1回だったため、十分な抗体が獲得できていない可能性があります
  • 昭和34年度~平成元年度に生まれた女性
  • 昭和54年度~平成元年度に生まれた男性
公的なワクチン接種の機会がなく、抗体を持たない可能性があります
  • 昭和54年4月1日以前に生まれた男性

東京都中央区の風疹ワクチン助成制度

当クリニックは、東京都中央区が行う「先天性風しん症候群対策(風しん抗体検査及び予防接種費用助成)」の指定医療機関です。
「中央区風しん抗体検査及び予防接種予診票兼助成金申請委任状」をお持ちの方は、無料で抗体検査および予防接種を受けることができます。ご予約の際、助成制度ご利用の旨をお伝え頂けますとスムーズです。

風しんワクチンが受けられない人

以下に当てはまる方は風疹ワクチンを受けられません。

  • 妊娠している女性(または妊娠の可能性がある女性)
  • 37.5℃以上の発熱している人
  • 過去にワクチンを接種してアナフィラキシー症状を起こしたことのある人
  • 3ヵ月以内にガンマグロブリン注射または輸血を受けた人
  • 27日以内に生ワクチンを接種した人
  • 6日以内に不活性ワクチンを接種した人
  • 重度の急性疾患に罹っている人

この他、先天性異常や悪性腫瘍、内臓の病気などがある人、過去に予防接種をして重い副反応がみられた人、アレルギーを起こす可能性のある人、1ヵ月以内に何らかの病気に罹った人などは医師にご相談ください。

新型コロナワクチンを接種した方は、2週間以上間隔が空いていれば風しんワクチンの接種が可能です。

風疹ワクチンの副反応

風疹ワクチンの予防接種後は以下の副反応がみられることがあります。

  • 発熱
  • 発疹
  • 蕁麻疹
  • 関節痛

風疹ワクチンは比較的副反応が少ないと言われています。ただし、極まれなケースとして100万人~150万人に1人の割合で脳炎や脳症などの重篤な副反応が報告されています。

風疹ワクチンを接種する際の注意事項

女性が風疹ワクチンを接種した場合、2カ月間の避妊が推奨されます。

風疹ワクチンは生ワクチンのため、体内で一時的に風疹ウイルスが増殖します。この際に増殖するウイルスは極めて弱体化されたものなので、他人に感染することはありません。しかし、母体の中にいる胎児の場合、感染する可能性を否定できません。

これらの理由から、先天性風疹症候群を防ぐために風疹ワクチンの接種から2ヵ月間は、避妊期間としてください。